小さな新聞2月号(月刊わらじ連載)


「健康づくり」ってなんだろう
――数値にふり回される社会とは

 国民一人ひとりに健康手帳をもたせて健診情報を蓄積・活用しようという計画を厚労省が進めている。入学・就職・老年期といった人生の節目ごとに手帳を配布して健康づくりに役立てようと厚労省。(埼玉1/3)禁煙で有名になった健康増進法に基づくもの。(本誌'039月号参照)
 健康づくりのためというと異議をとなえにくいが、果してそうなのか。
 日本の母子、学校、職場、住民等、健診は世界に例をみないほど行われているが、それで病気がへって健康がたもたれているといったデータはまるでない。(外国では健診をやってもやらなくても大してかわらないというデータがある。)そればかりか、壮年期、老年期に入り、検査数値をもとに何種類かの薬を処方されている人の何と多いことか。
 例えばコレステロール値。基準値より少しでも値が高いと「高コレステロール血症」という病名がつき薬が処方される。現在日本で一番処方されている薬はこの薬。コレステロール値が高いと狭心症や心筋梗塞になるという宣伝がいきとどいているので、いっしょうけん命薬をのみ、食事療法にはげむ。しかし、コレステロール値が低いと脳卒中や他の病気が増え、かえって死亡率が高くなるというデータは宣伝されていない。
 こういうことは何もコレステロール値に限ったことではない。
 加齢や個人差による体の自然な変化で検査値が基準値をこえることがあるということを無視して、基準値からずれると無症状でも「病気」にしてしまう構造を見直さないで、「健康手帳」をもたされた人は、今よりいっそう数値にふりまわされ、さらなる検査や薬に走るだろう。
 そんな生活は「健康」といえるのだろうか。