小さな新聞10月号(月刊わらじ連載)


「脳死」推進月間に疑問

 10月は「臓器移植推進月間」なのだそうだ。1997年10月に「臓器移植法」が制定され、毎年10月にはどこかの県で「臓器移植推進」のためのイベントが開かれている。
 15才以下の子どもにも拡大して提供臓器を増やそうというのが目的の臓器移植法改訂を前にして、小・中学校での「臓器移植」の出前講座もそこかしこで行われている。
 政府広報室のホームページには「移植でしか治療できない人を救うには、死後に臓器を提供する人の善意が必要」と書かれている。
 推進月間では、臓器をとられる脳死状態の人は「死後の人」となっており、「脳死は死といえるのか」という根本的な問いは無とされている。
 「臓器移植推進月間」は、いいかえれば「脳死推薦月間」でもあるのに。


正常って

 「ふらふらする」といって年配の女性が耳鼻科の診療所を訪れた。耳鼻科的には悪いところはない。
 「今のんでいる薬をみせて」というと何と10種類位。血圧を下げる薬が3種類、めまいの薬が2種類……。よくよく聞いてみると、血圧の薬が増えてから「ふらふら」するようになったという。以前は上が140だったのが、120になった。かかりつけの医者は」「血圧はやっと正常値になったのだからそれでよいのだ」という。血圧を下げすぎてふらふらしているのだ。
 血圧、コレステロール、血糖値など、なんでもかんでも正常値にしないと安心できないという風潮が強い。
 身体にあわせてやや高めになっているわけだし、正常値にしたから長生きできるという根拠なんてどこにもないのにもかかわらず。正常値の上限を10下げると、膨大な異常者が生み出される。
 異常と正常の境なんて人為的に決めたにすぎないのに、正常範囲を追い求める社会は、多くの「病人」を創り出している。