小さな新聞5月号(月刊わらじ連載)


「安い薬」より薬濫用を抑えよ

 厚労省が医療費を抑制しようと躍起になっている。今度は、新薬の使用が「標準」だったのを、安い後発医薬品を「標準」に転換する方針。(4/22読売)
 耳鼻科のM医師は語る。「診療所という現場にいて実感しているのは、何と多くの薬が処方されているかということ。特に高齢者。降圧剤にコレステロール低下剤に、血液サラサラにする薬、ねむり薬。他科でどっさり薬を出されている人に、私の診療所でまたまた薬を出してよいものかとちゅうちょしてしまう。」
 一挙に後発品を使うより先にやるべきことがあるのではないか。ほんとうに必要な薬かを再吟味する、その結果、医療費に占める薬代はかなり減るのではないか。
 たとえば、高脂血症の原因になっているコレステロール。コレステロールの基準値を220mg/dlと決め、それ以上は下げる必要があると決めたのは専門学会だが、実際には220の根拠はどこにもない。それどころか、国内外のいくつもの調査で、コレステロール値が220〜260ないし280の人が一番死亡率が低かった。220以下に下げると、他の病気になりやすく、死亡率が減ったというデータはないのである。現在の基準では、国民の1/2が高脂血症とされる。基準値をもし260に上げると、高脂血症の患者は1/4に減り、280に上げると1/10になるといわれている。
 薬を飲まないで、長生きできる方がよいではないか。基準値にあわせて「高脂血症」と診断された患者が飲むコレステロール低下剤は、年間三千億円。
 血圧も同様。
 基準値を少し操作するだけで、驚くべき数の人が患者になる。いろんな値を現在の基準値内にキープすれば長生きできるかというと、そうではない。