小さな新聞6月号(月刊わらじ連載)


はしか――予防信仰の陥し穴

 はしかが大流行し大学での休講が続出した。昔は一年おきぐらいに流行したものだが、1978年にはしかのワクチン接種が定期接種になって、ほとんどの乳・幼児がうけるようになり、はしかは激減した。
 一度かかったり、ワクチンでつけた免疫力が持続しているうちにまたかかると、二度目は軽くすむか知らないうちに治ってしまい免疫力は増加する。でも流行がなくなると、ウィルスに出合う機会がなくなり免疫力はおちる。今年はしかに自然感染した人は、かなり強力な免疫力をつけたわけだがら幸せかもしれない。
 昔、はしか、おたふくかぜ、水ぼうそうなどは、子どもの病気だった。いろんなワクチン接種が始ってからは病気も様がわりしている。。おとなになってかかる人が増え、かかると結構つらい。
 「予防」ということがほとんど信仰のようになっている現代では、あらゆる病気をワクチンで抑圧しようと、ワクチン製造にはどめがきかなくなっている。ジフテリア・百日ぜき・破傷風・風疹・インフルエンザ等をはじめインフルエンザ菌肺炎球菌などなど。
 時代や地域、あるいはハイリスクの人によって予防法はちがうが、「予防」ということで、ほとんどの人にワクチン接種が推奨・強制されている。
 病気にかからないという目先の利害が優先し、ワクチンの副作用や長期的な免疫力の問題、予防によって失われるもののことなどは不問にふされる。
 「病気にかかってもいいじゃないか」「自然に治るのをまちましょう」とかいい出せる雰囲気はなくなっている。
 何かにうつつをぬかしても「はしかにかかったようなもの」とおおめにみられるのは、死語になってしまった。