小さな新聞8月号(月刊わらじ連載)


メタボ・キャンペーンへの疑問
厚労省の特定健康検査計画

 「特定健康診査」と「特定保健指導」が2008年度から始まる。40-74才の全国民を対象にいわゆるメタボリックシンドロームのある人と予備軍を選び出し、悪い生活習慣を自覚させ、改善するため指導するというもの。都道府県や保健組合等を競わせ、成果をあげた所を表彰したり、ペナルティを課すなんてことも計画されている。高齢者の医療費を減らそうという目的。
 ところで、この計画案には、基本的考え方として次のように述べられている。
 「七十五歳頃を境にして生活習慣病を中心とした入院受診率が上昇している。これを個人に置き換えてみると、不適切な食生活や運動不足等の不健康な生活習慣がやがて生活習慣病の発症を招き、通院、投薬が始まり、生活習慣の改善がないままに重症化する。」
 生活習慣をなおせないだめな人が病気になり医療費を使っていると断定している。生活習慣病になる人は非国民であると言っているようなもの。ちなみに生活習慣病の中にはガンも含まれるという。
 厚労省のこのような病気観には驚くばかりだ。医学が進歩しても病気の原因はいまだに分からないことが多いにもかかわらず、ガンも高血圧も高脂血症も糖尿病も、個人の生活習慣のせいにされてしまっている。
 少し前まではコレステロールが250などというのは病気ではなかったが、基準を少しいじっただけで現在では「病気」になっている。血圧、血糖値も同様だ。しかも基準の変更の根拠はあいまいだ。基準をきびしくすることで「病気の人」を大量につくり出しているが、今度はそれを個人の生活習慣のせいにして、生活態度を改めるように国をあげての指導を始めるというのだ。
 年をとればそこかしこに故障は出る。生活習慣は病気の原因の一部にしかすぎない。