小さな新聞3月号(月刊わらじ連載)


山野内時雄さんを悼む
もんてん住人・家族・隣人に見守られ逝く

 生活ホーム・もんてんの住人・山野内時雄さんが急逝された。享年69才。脊髄空洞症が進行し、四肢麻痺・じょく創などでベッドに居ることが多くなっていたが、それなりに元気で、突然のことだった。三月二日の夕食と缶ビール一本をのんで、ベッドにもどった直後、顔色が変り、ヘルパーさんが平野栄子さんに一報。看護師の平野さんと隣に住んでいる医師の水谷さんが数分後に到着した時にはすでに心肺停止状態。二人が心マッサージをするうちに救急車が到着。救命処置をして独協医大の救急救命センターに到着。心マッサージを始めて一時間半後に心臓が鼓動を再開したが、意識はもどらず、三日明け方親族が見守る中、帰らぬ人となった。、


想――うつ

 「若者に急増するうつ病」という厚労省研究班の全国調査の結果が報告された。うつ病などの気分障害、不安障害、アルコール依存症などの生涯有病率は四人に一人。特に34才以下の若年層で急増している。(2/27埼玉)
 こんなにも増えた要因は、うつ病などの判断基準が変り簡素化されたこと、新しい抗うつ剤の登場で「うつ病」と診断される人が「急造」されたことである。今や日本の抗うつ剤市場は400億円をこえる。他の大きな要因は、今の若年層は、バブルが崩壊し、先行き不安な社会で、選択や自己決定に伴う自己責任を求められ、自分らしさの競争をして育ってきた世代である。
 薬をのみながら、いっしょうけん命社会でがんばっている姿は、痛々しいほどである。
 薬の助けをかりつつ、社会やまわりの人と関係を結びつつ生き方を見直す契機になれば「うつ」も悪いものではない。若年層の「うつ」は時代の産物とも言えるものだから。