小さな新聞5月号(月刊わらじ連載)


「尊厳死」迫る後期高齢者医療
診断報酬で誘導するしくみ

 四月から始まった「後期高齢者医療制度」に、「後期高齢者終末期相談支援料」という項目がすべり込ませてある。内容は、「尊厳死法案」として考えられているものとほとんど同じ。法案成立を待たずに実質化していたといえる。
 「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン(厚労省)」を基本に、治療の開始、不開始、中止、急変した時に病院に搬送するか、しないか等を文書化した場合、2000円の診察報酬がつけられる。
 「終末期」に関しては、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者」と、ばく然としたもの。高齢となり、日常生活が困難になり、医療や介護が必要な人は、そもそも「回復」の見込みがない人がほとんど。そういう人は、「医療を求めず、早く死んでくれ」と迫っているようにも受け取れる。
 「死に方」を決めるようにいわれた当の人は、どんな思いをいだくだろうか。
 いずれ死ぬとしても、病気の経過の中では「もう死んでしまいたい」と思うこともあるだろうし、「もう少し生きてみたい」とも揺れ動くだろう。「選択と自己決定」をし、一見尊重されたようにも見える。が、情報は、技術と力をもつ医療者側から一方的に与えられる。「本人が決めてくれる」のだから、医療者側の責任と気持ちは軽減されるだろう。医療費も軽減する。
 だが、「相談支援」の内容が「死に方を決める」というのはあんまりではないか。


命の選別 子供も

 「脳死・臓器移植法案」の審議を速めるよう厚労省が促した。(4・26読売) 15才未満の子どもからの臓器提供を拡げようというもの。「どうせ助からない」と高齢者から子どもまで、命の切り捨てが加速するか。