小さな新聞7月号(月刊わらじ連載)


たん吸引は「医療」でなく「生活」

 '12年4月から介護職員等によるたん吸引等についての制度が始まった。一定の研修を修了した介護職員等ができるようになった。今まではこれらのケアは「医療行為」ということで原則、医師・看護師以外はやってはいけないとされてきた。在宅のALS等の人たちに対してのたん吸引等は違法だがやむを得ずやってもよいとされてきた。法律の改正でたんの吸引などが必要な人たちがより暮らしやすくなるのではと期待されたが、実際はそうでもない。これらの行為は、人工呼吸器を使って生活している子どもの親の会のバクバクの会などが以前より「医療行為」という位置づけを外し「生活支援行為」にという要望を出していたにもかかわらず、今回の改正によっても「医療行為」という枠を外してないため介護職員やその所属する事業所が資格を取るハードルが高くなっている。定時にたんの吸引をすればよいというものではない。たんがつまればいつでも随時に吸引をする必要がある。
 どんな研修をするのか調べてみた。調べてみて驚いた。厚労省が出した「介護職員によるたんの吸引等研修の指導者用マニュアル」によると、家族以外のものが行える吸引部位は、鼻腔内・口腔内で、咽頭(のど)はだめとされている。鼻や口から空気を吸っている場合、たんが絡んで息ができなくなる致命的な部位は咽頭である。咽頭のたんを吸引しないでどうせよというのだろうか。とても「医療行為」といえる内容ではない。吸引を必要とする在宅の障害者の生活をささえるためにハードルを低くし、その中身を再検討する必要があるのではないか。


V学会で「境界対談」

 日本ボランティア学会が北浦和で開催された。「自立するでも、管理されるでもなく、せめぎあう」で栗原彬さんとわらじの会の山下浩志さんの対談がおこなわれた。