小さな新聞8月号(月刊わらじ連載)


脳死・臓器移植の闇は深まる

 6月14日に6歳未満の子どもが脳死とされ臓器を摘出された。死因は低酸素性脳症であったと公表された。低酸素性脳症をもたらすものは実にさまざまである。心臓発作、ぜんそく、感染でのどが腫れ狭くなったり、気道異物、各種ショック、首を絞められたり、溺れたりあるいは医療事故など。要するに身体が酸素をとりこめなくなるとおこる。低酸素性脳症という説明は死因としては説明になっていない。昨年15歳未満の子どもからはじめて臓器摘出がおこなわれた例では、「交通事故による頭部外傷」と公表されたが実際は電車に飛びこんだ自殺であった。頭部外傷といっても、交通事故、転落、自傷、傷害など原因はさまざまである。
 「脳死ドナーはどんな亡くなり方をしているか」というレポートがある。(世界、2012年1月号) 2011年10月末までの臓器移植法に基づく脳死臓器提供150例のうち死因非公表は26例(17.3%)、公表されても低酸素脳症や頭部外傷など本当の死因がわからないものが30例(20%)。脳死ドナーの約4割の死因が公表情報では明らかでない。
 このレポートによるとドナーの死因に関する情報は実はもうひとつあって警察庁が発表するものである。それによると150例のうち62例(41.3%)が検死を必要とする不自然死で、そのうち37例が事件性の有無を警察が調べなくてはならない亡くなり方をしていたということである。
 臓器を摘出されたドナーがどのような原因で亡くなったかということと同様に闇の中に隠されているのが、どのような救命治療を受けて脳死に至ったかということである。
 家族同意で臓器が摘出できるように脳死臓器移植法が変わってから2年間で92人の臓器が摘出された。美談として報道されていることの実態を明らかにしていく必要があるのではないだろうか。