小さな新聞2017年02月号(月刊わらじ連載)


「発達障害」の医療化への危惧

 総務省が発達障害のある子どもの診断をしている医療機関の受診状況を調べた結果、半数以上の医療機関で初診までに3ヶ月以上待たされていることがわかった。中には10ヶ月待ちもあった。総務省は厚労省に改善勧告を出したという(1・21朝日)。発達障害に対応する医療機関が増えると薬をのむ子どもたちがますます増えるのではないかと危惧していたら、こんな報告がされていた。「知的障害のある子どもの8人に1人に、統合失調症の治療に本来使われる抗精神病薬が処方されていることが、医療経済研究機構などの調査がわかった。うち半数以上では、年300日以上も処方されていた。子どもへの長期の使用は副作用のリスクが高まる。(1・30朝日)」医療機関で知的障害と診断された3~17歳の2035人の薬物療法について、2012年4月から一年間追跡調査した結果。一年あたりの処方日数は、小学校入学以降に長期化していたという。
 使われる薬は、コンサータ、ストラテラ、リスパダールなど、いずれも中毒性や依存性が高く、成長遅延、頭痛、腹痛、幻覚などの副作用80%に見られると報告されている薬。薬に関しては、「発達障害が治るわけではないが、多動・衝動性など顕著な症状を緩和する。うつ、不登校、不安障害、ひきこもりなど二次障害を防ぐため」と説明されている。米国国立衛生研究所の調査では、薬をのんでいた子どもの8年後の状態は、症状はかえって悪化、非行率は高く、身長・体重の抑制がみられたという。
 多動・衝動など「行動障害」といわれているものは、大きくなるにしたがって影をひそめていく。
 「行動障害」といわれるものを管理しやすくなるという目先の利益を求めて、手っとり早く医療に結びつけ薬に頼るのは教育の貧困えはないのだろうか。