ここは越谷市立北中学校前の旧日光街道の横断歩道。いままさに渡ろうとしている少年は、この春この中学に入学した宇津木君。乗っているのは自転車のように見える車椅子。そう、彼は脳性まひのためこの車椅子を使わなければ自宅からここまで通ってくることができない。教育委員会はスクールバスとエレベーターが完備した養護学校を勧めたが、彼も両親も、小学校からの友達と一緒の中学校以外考えられなかった。小学校では杖で通っていた彼は、なんと昨年の夏から中学までの通学路を完走する練習を始めた。この自主トレの最後の壁として立ちはだかったのがこの横断歩道。旧4号の抜け道で車が多く、曲がりくねって見通しが悪い。どうしても怖くて渡れない。他の中学生たちも必死で駆け抜けてゆく。入学式を数日後に控えたこの日、わらじの会の面々と市役所担当課が一緒に現場を点検し、なるほどと納得して入学式の日、警察にも手押し信号設置を要望した。しかし「人が死なない限り信号機はつかない」という俗説はどうやら真実らしい。今年から文部省も県教育局も「特殊教育」という看板を下ろし、「特別支援教育」という言い方で地域で学ぶことを支援するのだと語り始めているが、信号機整備すらバックアップできないで何が「特別支援」か。彼に半年の自主トレをさせたことを、教委は恥じよ。「共に育つ」上での支援には、そう!これまでの特殊教育の知識や技術はほとんど役に立たないのだ。 |