『月刊わらじ』2002年4月号表紙

 ちょっと見にくいと思うが、この2階建てプレハブの外壁には「アバヨ」とか「サヨナラ」などの文字がガムテープで書かれたばかりである。取り壊しを明日に控えたこのプレハブは、春日部市大場の谷中耳鼻科駐車場の一角にあり、かっては埼玉県東部の障害者運動を切り拓いた伝説の「自立に向かってはばたく家準備会」の活動拠点であった。同準備会が、事業所や生活ホーム、ケアシステム、通所授産施設、地域デイケア施設等を生み出すことにより、その役目を終えて解散した後、このプレハブはもっぱら「ケアシステムわら細工」の事務所として使われてきた。
 ところがこのたび地主さんが、この土地に高齢者のグループホームを建設することになり、プレハブを撤去して土地を明渡さなければならなくなった。写真は解体を前にプレハブとの別れを惜しむ人々が集まって感慨にふけっている情景。電動車椅子の後姿は「わら細工」事務局員の村田さん。遠景の車椅子姿は「はばたく家」創設時のメンバーである新坂さん。その右が「デイケア・パタパタ」職員の吉田さん。いちばん左が「通所授産施設・べしみ」職員の会田さん。みな数え切れないほど、このプレハブに出入りした。
 感傷に走るつもりはないが、もったいない気がする。「自立支援・社会参加」がうたわれ、また「市町村の力量が問われる」とされる昨今の福祉状況において、同じ地域に住む障害のある人ない人が何の制度もなかったころ手探りで築いてきた「福祉」の原イメージを、私たちは地域の共有財産として語り継ぎ、今後の施策や活動に生かしてゆくことが必要なのではないか。そんな思いで撮ったこの一枚。