『月刊わらじ』2002年7月号表紙

 今年も蛍を見ることが出来た。越谷市恩間新田の生活ホーム・オエヴィスのすぐ近くの田圃のへり。梅雨の終わり近く、34℃の真夏日、小さな命が誕生した。この夜見ることが出来た蛍は2匹。薄暗がりの中にボーっと幻のように光っているさまは、あたかもオエヴィスの創業者であり、かつ最初の入居者であった故・新坂光子・幸子姉妹の精霊のよう。これから梅雨が明け夏空が定着するまでの2週間くらい、蛍たちとの短い逢瀬を楽しむことが出来そうだ。
 「身がやけて 夜は蛍とほとれども 昼はなんともないとこそすれ  良寛」
 ここ数年秋のわらじ大バザーの会場になっている春日部市役所裏の公園内に、荒れ果てた温室がある。何年前のことか知らないが、この中で市が蛍を育てようとしていたと聞いた。なるほど中をのぞくと、かっては沢が流れ、水辺の草が生えていたようすがしのばれる。挫折の原因はわからないが、温室が残っているところをみると、再開の含みももたせているのか?
 越谷市の能楽堂がある花田苑でも蛍を放すお祭りがあるという。その蛍は花田苑の中で養殖されているのだろうか?
 蛍が小さなブームになっているが、恩間新田、大場周辺だけを見ても、つい5〜6年前までは10ヶ所近く見られた小さな生息地がほとんど消滅しつつある。死ぬために生まれ、やがて滅びるために生まれる……私たちを含めた生きとし生けるものすべての滅びを受け止めつつ、ほろほろと光る…。