『月刊わらじ』2003年9月号表紙

 台車を押している二人は、春日部市の心身障害者地域デイケア施設・パタパタの通所者である白倉清美さん(左)と石井由佳さん。そして、ここはおなじみ、埼玉県庁であります。二人は、今日、アンテナショップ・かっぽの店番に来ており、ただいま午後。定番であるお弁当メニュー配りのため、県庁の各課を回りに出たところ。午後ですから仕事疲れを癒すための飲み物なども、ついでに持参しております。
 こうやって、県庁の職場を巡る‥‥これは実に重要な意味をもっておるのです。というのも、「障害者の社会参加」といいますが、そのイメージをもてない人が多い。彩の国障害者プラン21でも、障害者スポーツとか障害者福祉センターといった特別な活動だとか、せいぜい点訳とか手話などコミュニケーション施策などが挙げられているだけ。もちろん「就労の促進」は掲げられていますが、一般就労はできる人の話で、できない人はデイケア施設等を「福祉的就労」と名づけて「就労」に繰り込んでしまっている。県庁もそう。
 でも「社会」というのは、障害のない人たちのほうが圧倒的に多いところのことなんだよね。地域の学校とか、この県庁のような職場とか、町内会とか、商店街とか‥‥そこに入っていくことをぬきにした「社会参加」というのはありえない。だから、「できる人から順番に」というのではなく、「できない」とされた人ももれなく入っていく‥‥そんなイメージを県庁の職員さんたちとも共有するための大事な仕事を、いま二人は淡々と遂行しているわけであります。出入り業者のそのまたお手伝いでしかないから、「就労」には程遠い活動。しかし、県庁の職場の側から見ると、静かなインパクトである。
 この日はパタパタの職員も1人同行したけれど、職員だけでは足りない‥‥というよりも「だけ」では社会参加にふさわしくない。介助者も地域の中から…というわけで、この日はA指定居宅事業所より、石井さんの支援費の移動介護としてヘルパーBさん(右端)の派遣を受け同行してもらった。石井さんは当日パタパタを休んだという形をとればいわゆる「サービスの二重支給」問題も生じない。これは硬直した制度を社会に適応させてゆくひとつの試み。そよ風のように職場へ、地域へ、社会参加を進めよう。