『月刊わらじ』2004年1月号表紙

 前号に続いて、今月も季節感のある表紙を。これは昨年1月のかがし座前。同座の1周年記念イベントに登場した獅子。が、どこか不気味さが漂う。獅子頭というより、ムンク描く虚無の只中で叫ぶ人の顔を連想させる。舞うは、2年前、1年間ボランティアとしてわらじの会に漂着し、そのまま居ついている仮谷崎健さん。この怪異な顔も本人の造形だ。そういえば、彼が愛する不条理漫画の鬼才・榎本俊二の描く人食い巨人にも似た頭である。
 ちなみに獅子舞の源流のひとつは、遠い昔、中近東と隋・唐をつないだシルクロードの遊芸の民に遡るという。江戸時代は、鳥追いや猿回しなどと並んで、カミが異形の姿をとって祝福をもたらす行事として、広く定着した。門ごとに舞い、カンパをもらい歩く。こうした仕事は、町や村とは離れた、定住者たちのはかり知ることのできない世界から稀に訪れる「異人」とみなされていた、「非人」という被差別者たちによって担われた。
 ついでながら、獅子舞はいまや無形文化財や村おこしイベントに昇格してしまったが、「ささら」という竹で作った簡単なもので音を出しながら、歌ったり語ったりする門付け芸をしている障害者が、10数年前、春日部市内牧で目撃されているが、その後の情報はない。昔の祭りでの「蛇娘」や「狼女」など、障害者差別の極みから健全者社会の底に眠っていたどす黒い不安や恐怖をかきたてる活動も「健全化」されて久しい。近づく「冥途の旅」へのガイド役として、遊芸者たちの復活が待たれる21世紀である。