『月刊わらじ』2004年3月号表紙

 親しい人々に見守られ、花々のしとねに横たわって、いま永遠のかなたへ旅立とうとしているのは、谷中耳鼻科の影の事務長として、また人族と猫族との異文化交流担当者として、昼夜を分かたず、献身的に働いてこられたビクトオル・クロウ(略称・ビク)氏。3月9日午前11時すぎ、耳鼻科向かいの農園に訪問活動に出かけた帰り、道路で通行中の車にはねられ、7年の生涯を閉じた。
 谷中耳鼻科の影の診療所長として、もっぱら遠地の巡回活動を担ってきた母・故マルガリータ・クロウV世の長男として生を受け、幼い頃から母の薫陶を受けて、耳鼻科周辺の地域の訪問活動を担ってきた。ビク氏のきりひらいた新地平は、表の事務長・山下氏をパーソナル・アテンダントとして育て、介助付きの地域訪問活動を毎朝実施したこと。この介助付きの就業形態の創出によって、ビク氏の訪問活動中に地域の人々と猫々との出会いも促進され、身近な異文化交流が実現した。
 谷中耳鼻科には、ビク氏のほか、もっぱら黄色い部屋の業務に従事している猫達がおり、現在は上の写真右のマエ田氏と左のテン神氏が住み込みで働いている。黄色い部屋は、近隣地域だけでなく、全県、全国からの人の出入りや、電話、FAX、メールなどが入り乱れるところであり、深夜業務や危険業務も多い職場であり、過労死した猫もいたほど。彼らの猫事管理やサポートは、影の事務長・ビク氏が、テン氏を助手として担ってきた。ビク氏の業績をどのように継承発展させられるか、谷中耳鼻科・黄色い部屋は大きな曲がり角にある。