『月刊わらじ』2007年5月号表紙

 これは10数年前の写真。電動車いすに乗っているのは、現在デイケア施設パタパタの通所者である加藤弘昭さん。そのパタパタも、介護人派遣事業もなかった時代。重い肢体不自由・知的障害に加え、弱視。言葉がなく、車椅子の自走も困難な彼だからこそ、電動なら自己表現が可能になるかもと、周りが工夫して初めて道路へ出たときの写真です。車等が至近距離になるとよけていました。車のほうで避けてくれるよう看板を背負わせ、後ろには「車イス練習中」と大書しました。1時間余りかかって、彼はせんげん台駅に着きました。加藤さんが独自の地図をもち、旅立ちの用意を整えていることを知った瞬間でした。支援策が整ってきた現在、冒険は困難になり、本人と地域の他の人々が重い障害をこえてコミュニケートしにくくなりました。先月から生活ホームで始まった加藤さんの体験入居の介助にかかわる若い人々に語り伝えたエピソードです。