『月刊わらじ』2009年05月号表紙

2009年05月号

 春日部市内牧公園バーベキュー広場でのTOKOおしゃべり会は、2年半ぶり。あのとき、地母神のように静かに笑っていた人は、いま黄泉の国を統べている。彼女が来たり、そして去ったこの世は、変わらず人を分け続けている。「弱い者達が夕暮れ さらに弱い者を叩く」(ブルーハーツ)分けることで、差別が重層的になってゆく。それだけに、弱い者が「ここに居続ける」と人々の中で開き直ったとき、呪文は解けてしまう。残された 母ちゃんたちは、琵琶法師のように語り続ける。「ここに居る」そう言うだけでいいのだと。言えなくても「居る」だけでいいのだと。夏のような日差しが樹々を通してやわらいで注ぎ、五月の風が通る。豚汁を鍋からすくって食べる。グループホームの暮らしや求職活動が語られる。走ったり、よじ登ったりする。働き始めた卒業生が話す。父ちゃんが、職場の障害者雇用を語る。「平凡であることを恐れてはいけない。…明日の朝、ラッパは鳴らない。深呼吸をしろ。一日がまた、静かにはじまる。(長田弘)