『月刊わらじ』2009年07月号表紙

2009年07月号

 「あっ、じゃんけんおじさんだ!」子どもたちの声が響く。ここは春日部市大畑にある地域デイケア施設・パタパタの前の橋の上。同施設通所者の江橋さんが、下校する子どもたちに向かって、じゃんけんをする。学校にも、家庭にも、居場所を見出せず、支えはネット空間のみという子も少なくない。少子社会の子供たちが、やわらかな管理に包まれて生きている中で、この橋の上に小さな裂け目ができている。そそくさと通り過ぎる子、じゃんけんをしてゆく子…時がたって、やがてこの頃をふりかえるとき、「じゃんけんおじさん」がいたなあと、たくさんの人が思い出すにちがいない。すべてが決定されているように見え、すべてが夢の中の出来事のように見えていた世界が、もしかしたらまだこれから一人ひとりが一緒に歩きながら、創ってゆく世界なのかもと、あの時ふと感じたなあと。