「平和を願う音楽と灯篭流しの夕べ」。越谷市中央市民会館の前の葛西用水の畔で。前夜、橋本画伯に灯篭流しの説明を試みたが、誰の通夜かと訊かれた。沢山の人という手話を、沢さんという名前とかんちがいされた。でも、当日、実際に灯篭を川岸まで抱えて運び、画伯なりのイメージが得られたようだ。ほとんど視えない画伯だが、闇の中の灯りは視える。ゆらゆら。ゆらゆら。故丸木位里・俊夫妻の原爆の図・第12部。「八月六日、今も広島の七つの川はとうろうであふれます。父の、母の、妹の名をしるして流すのです。…それはあの時屍に満ちて流れた川なのです。」第1部は「幽霊」。皮をひきずり、手をなかばあげて歩く人たちの姿が幽霊の行列に見えたという。新仏を西方浄土へ送る精霊流しとはちがい、永遠に三途の川の宵闇を彷徨う霊たちに手渡す灯り。時折り闇を破って、誰かの手が画伯の手に触れる。風が渡る。少し水しぶき。平和とは別の手段による戦争の継続だという。日本の今。 |