『月刊わらじ』2011年10月号表紙

2011年10月号表紙

 水上(みなかみ)プロレスが、東越谷第2公園で行ったわらじ大バザーに登場してから8年がたつ。会場はこの間、逃げ水のように各地を転々としてきたが、その行き先々に水上プロレスは現れるのだった。プロレスといっても、リングを仕切るロープはない。写真は、今年10月9日、せんげん台第4公園、わらじ大バザー・ガラス食器売り場での激闘。売り子や客をはらはらさせながらの格闘は、いにしえの漂泊する武芸者をほうふつとさせる。「武芸」という言葉の通り、武術、芸能、技術は、流浪する人々のライフスタイルそのものだった。そして、商売もそうだった。市(いち)とは、さまざまな技能を有する人々と農業をもって定住する人々が出会い、ぶつかり、交わる現実の幻想空間だった。さあれば、それは異文化が交差する「ちまた」に出現する。せんげん台第4公園は、まさに旧来からの水郷・越谷と首都圏のベッドタウン・越谷が交錯した地点に位置している。かってのサーカスが人さらいと結び付けられ、それゆえにあやかしの美を発散していたように、わらじ大バザーも、得体のしれないさまざまな芸能をはらんで地域を旅してゆく。この写真、奥の方を見ると、プロレスなど無関心な人々の情景が見える。一億一心とは程遠い猥雑さ。そこに未来がある