『月刊わらじ』2012年05月号表紙

2012年05月号表紙

 いま「旬」といったら、これでしょう、やっぱり。春耕―いい言葉だよね。春になるのを待って、土を耕す。そこには長い冬の季節、指折り数えて待つ人々の日々が折りたたまれている。ここはしらこばと水上公園。正面入り口の花壇。盛りを過ぎたパンジーを抜き、土を起こし、新たな土と肥料を加えて、夏の花苗を植える準備作業。NPO障害者の職場参加をすすめる会が、(財)埼玉県公園緑地協会から業務を委託され、障害者施設や就労準備中の障害者たちに「一緒に働かないか!」と呼びかけて実施している仕事の日の風景。就労支援センターの相談者たちは、路線バスと徒歩で9時前に現地集合。職場体験も兼ねている故のお約束。各障害者施設は利用者3〜4人に職員が1人のユニットで車で10時に合流する。制度のしばりや安全・安心を望む家族の意識等の影響か、施設として外へ出て活動する機会が年々減っていると、職員たちも語る。だからこの共同作業はえがたい機会だと。本人たちも久しぶりに再会した友とエールを交わしたり、ユニットを崩して他の人々と働いたりする。いっぽう施設に入らず就労支援を利用している人々は、ふだん概して孤独である。ご近所から不審の目で見られているのではないかと思いこみ、ハローワーク、就労支援センター、病院に行く以外は家にこもるか、レイクタウン辺りをさまよう人もいる。だからこの仕事の希望者は多く、調整が必要なほど。そして、自分が避けてきた施設の人々と、ここで出会い、一緒に働くことになる。中には職員以上にこの作業なら得意という人もおり、入り乱れて仕事を遂行する。今日は職員・支援者を含め31人。文字通りその日その日のコラボレーションだが、地域とはこのようにして編みなおされてきたのかもと実感する。春耕―耕すのは土だけでなく、土を通して人々の間を耕している。