『月刊わらじ』2012年12月号表紙

2012年12月号表紙

 毎週金曜夜に開催される橋本宅手話会は、聾唖、弱視、下肢マヒの橋本克己画伯がさらに視えなくなるにしたがって、かってのようにこの月刊わらじ「手で読もう」の執筆者でもある常連メンバー・荻野好友など聾文化の伝承者からの手話の学びの部分よりも、画伯自身が霧の中で編み出す独自の手話による日常の語りを各自の手で読み取る会となっている。毎週この夜のために、画伯は1週間の出来事を膨大なテキストとして自分の中で整理し、どう読むのかわからないメモ帳を用意して、白紙につぎつぎとそのテキストを書き出してゆく。まさに金曜夜は画伯の1週間の生の証であり、テキストをみなに復唱させることを通した生き方の社会的認知の場である。いや、衆生の教化、救済のための道場とみなしているかもしれない。にもかかわらずこの夜、手話会を始める前に画伯はメンバー全員に向かって手を合わせて拝む。何事かと驚くメンバーたち。画伯が言うには、1月の下旬から1ケ月の予定で、母ミツエさんが足の関節の手術で入院するため、画伯は単身でのサバイバル生活に突入する。画伯にとっては三度目だが、過去さまざまな困難に。苦しみ悩むすべての衆生を必ず助けるべく闘う私をみなさん助けてと拝む克己の明日はどっちだ。