2011年9月号の表紙にも登場した劇団どくんご。今月号のお題が「どく」となれば、再登場は不可避だよね。北越谷駅前さくら広場での公演「君の名は」。奇しくもその2011年7月の月刊わらじの特集は「なまえ」だった。「君の名はと たずねし人あり その人の 名も知らず」 大空襲の夜に出会い、半年後の再会を約して別れた二人は、ニアミスをくりかえしながら時代が変わってゆくというメロドラマの古典。でも待てよ。彼と彼女は、ニアミスであること自体、「神ならぬ身の知る由もなし」。本人も知らない一部始終を知る権利が視聴者に与えられてる。だから、お茶の間で安心して涙を流し、明日また勤勉に働き、経済成長を支えた。 …というわけで、「君の名は」は、戦後日本の大衆消費社会のさきがけだったともいえる。そんな「君の名は」をでんぐりがえりさせちゃったのが、このどくんご公演。何しろ角砂糖を羊にして、アンドレとか名を付けちゃって、曲芸までさせちゃうんだからね。あるいは、客席に向かって、「覚えてる?」とつぎつぎ指さす。知り合いだったかなとドキリ。消費者特権なんて幻なんだなあ。今回は「埼玉県東どくんごファンクラブ」が幕間劇で割込み、わらじの会メンバーも登場。どくんごは5年前から毎年春から晩秋までツアー、冬だけ鹿児島で充電という捨て身に転じた。全国の地域の縁を支えに、縁をつなぐ。写真のフィナーレに示される如く、町や村を舞台とし、一緒に生きる。制度を使いつつも、人を分け隔てる制度を超えたいぼくらの思いと交わる |