『月刊わらじ』2016年12月号表紙

2016年12月号表紙

「牧場のおっさん」として知られる八王子市堀之内の鈴木亨(とおる)さん。親子2代にわたり牛と生活しながら多摩ニュータウン計画による強制収用に反対し、市民団体や専門家とも協働して、多摩ニュータウンの近隣公園として里山を保全するなど、農を都市環境の一部として評価させてきた。その「おっさん牧場」をNPO法人障害者の職場参加をすすめる会のデイツアーで先月訪れた。共に働く街を創るつどい2016(12月18日)で特別報告をいただく日野市のNPO法人やまぼうしの伊藤勲さんに案内役をお願いし、障害者が共に働く農ある街づくりの事前現場見学会として。これまで、廃校になった小学校の給食設備を利用したレストランや宅配サービスをはじめ、やまぼうしの事業はあちこち見てきた。が、それらは「やまぼうしの事業」と一括されるべきではなく、鈴木さんをはじめとする地域のさまざまな人々が押し合いへし合いして生み出してきたのだなあと実感した。
 鈴木さんはこの日、かって地元の農家で暮らす知的障害の青年の財産を守るために一緒になって走り回ったいまは亡き弁護士の名を口にした。鈴木さんの話を聞きながら、越谷市恩間新田の農家の奥から「ここで生きたい」と、団地住民らの手を借りながら動き始めた重度障害者たちの訴えに、苦悩しながら、分家や土地無償提供という形をとって、生活ホームオエヴィスやくらしセンターべしみを生み出していった両・新坂家の人々の姿が重なった。奇しくも、堀之内も恩間新田も境界の地である。