TOKO10年――迷いながらまた一歩

 このT O K O も先月で1 2 0 回発行したことになります。毎月1 回ですから、今月の1 2 1 号で11 年目に突入したわけです。その踏み跡をふりかえってみます。

1 .「おしゃべり会」はなぜ始まったのか

 もともとは、はがき新聞として、ずっと発行してきました。毎月第2 水曜日に、越谷市役所の地下にある職員組合事務所の一角をお借りしてやってきた「おしゃべり会」のようすを伝えるのが主な目的でした。「おしゃべり会」をなんで始めたかというと、9 2 年当時県立吉川高校定時制に1 0 人近く( ? )の障害のある生徒が通っていました。もちろん、そこに到る熱く、面白いたたかいがあったわけですが、ここでは省略します。語り部は少なくないので、ぜひ聞いてください。
 やっと入ったその高校生活、そこで向かい合っている壁、昼間の暮らし、卒業後の人生などを地域で一緒に考えようということでした。とりわけこれから幼稚園・保育所、普通学級で共に育ち・共に学ぶことを願いつつ悩んでいる親子やさらに高校をめざしたい親子と体験や情報を分かち合いながら地域をきりひらくつながりを作っていこうというのが、「おしゃべり会」だったのです。異なる世代の親たち、大人の障害者、介助者、定時制教員など、雑多な顔ぶれがふらりと顔をのぞかせることのできる場として、月1 回開いてきました。

2 .「おしゃべり会」の面白さ

 はじめの5 〜 6 年は、毎回1 0 数人が参加し、ワイワイやっていました。その後、高校を卒業する生徒が増えたことと、市教委がソフトな就学指導に転換し、就学先について「本人・保護者の意思」が尊重されるようになり、悩みを持ち寄って相談し合わなければ… という切迫感が減ったのか、常時参加する顔ぶれは少なくなっていきました。話題は卒業後の生活・就労から就学前の療育の問題、さらには親や教員の生き方までひろがり、人数にかかわらず、おしゃべり会はいつもにぎやかでした。
 そのころ吉川高校の教員O さんから、こんな報告がされました。「希望するものはすべて受け入れ、厳しい校則をなくし、卒業したいものは全員卒業させるという状況を、長年かけてきりひらいてきた。その結果、2 年生など授業に出ているのは障害のある生徒一人だけということも。登校はしていても、授業が終わる時間までぶらぶらしていて、午後9 時になってからバスケットをやりだすグループもある。彼らに1 1時ころまでつきあうことになる。みんなで一致して何かをやる雰囲気はなくなっているが、学校という制度そのものが極端な集団主義であることを考えれば、子供たちはばらばらな行動でバランスを取っているのかも。」( T O K O 75 号・1999 年2 月) 同校での実践が投げかけた問いは、いまもなお響き続けています。

3 . はがきで細く長く続けてきたT O K O

 おしゃべり会を出席した人だけのものに終わらせるのはもったいないので、T O KO を山下個人の責任・負担で発行し続けてきました。長続きするようにと、あえてはがきで出してきました。ついでに教委や団体の情報も短く載せました。こんなに長く続けるつもりもなく、単純に「東部地区」のT O( と)と「懇談会」のK O( こ)を付けて出してみただけ。でも、参加人数の多い少ないにかかわらず、おしゃべり会はいつも新鮮で深い問題を掘り起こしてくれるもので、それに触発されながらT O K Oを出し続けてしまいました。初めは東部地区限定でしたが、しだいに県内の他地区の知人にも送るようになりました。
 そうしている間に、T O K O を一方的に送りつけている相手がどう思っているのか、どんな暮らしと思いを抱いているのか、聞いてみたくなり、96 号( 2001 年1 月) に往復はがきでアンケートを取らせてもらいました。不要と答えられたあて先はカットしました。
 99 号( 2001 年4 月) からメール版を試行し始めました。これによって、より多くの相手に送れるようになりましたが、時には返信をいただくもののほとんどは一方通行なので、109 号( 2002 年3 月) のように電話取材をしたり、117 号( 2003 年1 月)のようなアンケートを行いその結果を掲載することにより、T O K O 紙面をもうひとつの「おしゃべり会」にできるよう努めています。

4 . T O K O も「おしゃべり会」も見直してゆく

 ところで、今年1 月の117 号から今月にいたるまで、はがきではなく封書で郵送し、知事の普通学級籍問題を中心とした情報を載せてきました。急に「情報誌」に変身したかっこうになったため、とまどっている方もおられるかもしれません。ただ、正月のアンケートでは、大きく変わるかもしれない状況について詳しい情報を知りたい方がたくさんおられました。とうぶんはこのスタイルを続けたいと思います。
 そのいっぽう、こうした文字情報だけでは得られない生きた情報をリアルタイムで交換する機会として、「おしゃべり会」にいろんな人達が集まれるようにしたいという思いも強まっています。昨年12 月の「おしゃべり会」では、毎回テーマを決めて地域の親や障害者、教員の中から誰かに話をしに来てもらうようお願いしようかということも検討し案も考えましたが、忙しさにかまけて企画倒れに終わっています。また、もともとバラエティに富んだ顔ぶれの出会いから、アーソーダッタカといった展開になる楽しさがあったのに、このごろ小さい子どもの親が顔を見せてくれないことは特に残念です。
 4 月のおしゃべり会のとき、成人の知的障害の娘さんの親である白倉さんが春日部市でおもちゃ図書館活動をしており、そこで知っている親子に声をかけてみるから次回はうちでやってみないかと提案をしていただいたので、5 月は白倉さん宅で「おしゃべり会」を開いてみようと話し合いました。6 月以降については、それからまた考えてゆきます。

 … というわけで、5 月は1 4 日( 水)午前1 0 時から1 2 時まで春日部市小渕372の白倉さん宅で「おしゃべり会」を行います。地図をご覧になっておいで下さい。山下が車で行きますので、千間台駅か谷中耳鼻科から同乗もできます。希望者はご連絡ください。