全障害児普通学級籍の課題を背負わされた「特別支援教育振興協議会」の第1 回会議が、5 月15 日に開かれたことは、新聞、TV等でご承知と思います。
ただ、実際に傍聴した限りでは、報道されたものよりも、ずいぶんトーンダウンしてきたなという印象が強いです。
障害者自立生活協会から協議会の委員に選ばれた武井さんは、同協議会内に普通学級籍問題を審議するために設けられた小委員会には入れませんでした。また、事務局長の森山県教育局特別支援教育課長の説明も、文部科学省の特別支援教育の中身に沿ったものが多く、普通学級籍の話はあまり入っていませんでした。逆に、委員の中の高校長は、「障害のある生徒を受け入れる側の生徒・保護者も当事者であり、彼らが不安がなく、納得できるものでなければ」と、暗に普通学級籍問題に釘を指していました。
この協議会の役割はなんでしょうか?知事の「トップダウン」に対し、学校教育を聖域として守るため反撃を加え、普通学級・高校を障害のある生徒から守り、さらにはできる子を伸ばすために邪魔になる子供達をLD、ADHD、高機能自閉症と判定し、特別支援教育への囲い込みの輪を広げることが、その目的になりつつあるという印象を強くしました。そして、ますます知事の素朴な「普通学級籍」宣言を応援したくなりました。(写真は、会議冒頭に挨拶する稲葉県教育長。その右が森山特別支援教育課長)
ただ、幸いにも武井さんが協議会委員になりましたし、小委員会も含めて公開になりましたので、ここでのどの委員の主張がどのように知事の普通学級籍宣言とかけ離れているか、何が壁になっているかといったことも含め、私達は全体像を知ることができます。みなさん、ぜひ傍聴に行きましょう。(初回の第1小委員会は、6月23 日(月)午前9時半より、県民健康センター。)この第1 回を傍聴して、あらためて私達が7月12 日に予定している「共に学び、共にくらす社会をめざして 彩の国障害者プラン2 1推進のつどい」の重要性を思いました。ふりわけの強化へ向けて大きく動こうとしている学校教育の場をこれ以上密室にさせないためにも、このつどいを通じて地域社会・市町村のくらしの中での学校の大切さをしっかりつかみ、知事・教育長へもはたらきかけができればと思います。
以下に、当日の稲葉教育長の挨拶と森山特別支援教育課長の説明を載せます。詳しい傍聴記録等は、埼玉障害者自立生活協会「通信」に載せますので、そちらをお読みください。
稲葉教育長の挨拶 |
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ノーマライゼーションの理念に基づく教育をどう進めるか。このことに関し、@共に育ち共に学ぶための新たな教育システムの構築について A後期中等教育における一人一人のニーズに応じた専門教育の充実について 以上二つの視点からご検討をいただきたい。これは、土屋知事の「障害者の幸せなくして県民の真の幸せはありえない」という理念や「障害のあるなしにかかわらず子どものころから共に学ぶことが大切である」という理念にもとづいてご検討を頂くものである。
平成13年11月に「彩の国教育改革会議」から、知事に対し、「21 世紀をたくましく生きる彩の国の子供達を育てるために」というご提言をいただいた。それを受けて、昨年2月、埼玉県、埼玉県警察本部、埼玉県教育委員会による「彩の国教育改革アクションプラン」を策定した。計画から実行段階に入り、今年度、新たに教育の日(11 月1 日)を制定した。今年度版の「彩の国教育改革アクションプラン」では、たしかな学力の定着育成ということで、少人数指導や習熟度別等の個に応じた指導を進める。また総合的な不登校対策を行う。さらに学校経営の改善に向け、校長の学校運営に関する権限と責任を強化し、学校評議員の設置、学校評価システムの導入を進める。これらのほかに「学校におけるノーマライゼーションの推進」として、特別支援教育振興協議会において今後の特別支援教育の在り方について検討することをこのアクションプランに盛り込んだ。
事務局長( 森山特別支援教育課長) の説明 |
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「彩の国障害者プラン21」の「第4 章」に、「自立に必要な力を高め、共に育ち、共に学ぶ教育を実現します」と明記されている。また、「現状と課題」の中で、「ノーマライゼーションの理念の実現には、障害のあるなしに関わらず、こどもの頃から共に育ち、共に学ぶことが大切です。」とあり、「施策の方向」の中で「新たな障害児教育システムの整備」がうたわれている。また「相談体制、指導内容の充実」、「学校施設の充実」、「高等部教育の充実」、「交流教育等の充実」があげられている。
次に、国の「2 1世紀の特殊教育の在り方について」最終報告では、「はじめに」のまとめのところで「今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方を整理するとともに、この考え方に基づいて@就学指導の在り方の改善、A特別な教育的支援を必要とする児童生徒等への対応、及びB特殊教育の改善・充実のための条件整備に…」と検討された課題を挙げている。この就学指導の在り方の改善については、学校教育法施行令22条の3の改正により具体化された。
また、「障害種別の枠を超えた盲学校、聾学校、養護学校の在り方や小学校、中学校等における特別支援教育の在り方等について引き続き検討を行っていくことが重要である。」と述べられている。
これを受けて出された国の「今後の特別支援教育の在り方について」では、その「基本的方向と取組」において、「特殊教育から特別支援教育への転換」をうたっている。その基本的考え方として、@多様なニーズに適切に対応する仕組みとしての個別の教育支援計画 A教育的支援を行う人・機関を連絡調整するキーパーソンとしての特別支援教育コーディネーター B質の高い教育支援を支えるネットワークとして広域特別支援連携協議会等 C盲・聾・養護学校から特別支援学校へ D小・中学校における特殊学級から学校としての全体的・総合的対応へ(特別支援教室) E特別支援教育体制を支える専門性の強化 が打ち出されている。
最後に埼玉県の特殊教育の現状を見ておきたい。本県における盲・ろう・養護学校就学者数及び学校数等の推移を見ると、平成9 年度から児童生徒数が年々増加している。特に高等部。今年度以降も増え続けると見られる。