特振協 二つの小委員会が開かれました
文科省路線(高等養護学校・主籍従籍)と分けない教育(普通学級籍)の対比が徐々に明らかに

 埼玉県特別支援教育振興協議会(特振協)の第1回会議については、前号で報告しました。そこで二つの小委員会の設置が決まったわけですが、第2小委員会については6月13日、第1小委員会は6月23日に開かれました。
 第2小委員会は特振協全体の委員長でもある宮崎東洋大教授が委員長になっています。この宮崎氏は元都立青鳥養護学校の校長で、同校の経験を生かして高等養護学校づくりを進めるために委員長になったのではないかと思われる人です。
 第2小委員会で配布された県の資料によれば、「高等養護学校」とは「高等部だけを設置する養護学校のうち、特に専門学科を設置するなどして職業教育に重点を置いた教育課程編成を実施している学校を指している。」とあります。千葉県の流山養護学校がそれで、「就職率100%」と宣伝していますが、全県から軽い障害児が選別されてくるのですから、そのぶんだけ一般の養護学校高等部の就職率が下がる仕組みです。
 定員内不合格や養護学校高等部の試験を高校入試前に実施する(高校受験する生徒は高等部を受けられないという要項がある)ことなどにより、県立高校の門を閉ざしているのですから、中学まで特殊学級や普通学級にいた子も卒業後は高等部に流れる道ができています。第2小委員会で配られた進学状況図によれば2002年度特殊学級の中3の77%(278人)が高等部に入ったとあります。いっぽう普通学級からは「毎年30〜60人」とあり、パーセンテージは書かれていません。

ウソッパチの就学・進学状況図

 普通学級に何人の障害児がいるかわからないと教育局は説明するのですが、同局発行の「埼玉の特殊教育」によれば、2002年5月1日現在、小学校の普通学級に在籍して通級指導教室で教育を受けている子供は1362人います。単純に6で割れば1学年あたり227人ということになります。また、同日付けの2002年度就学指導調査集計結果では、市町村の就学指導において、盲ろう養護学校が望ましいとされた子のうち普通学級に就学した子が77人、特殊学級が望ましいとされた子のうち普通学級に就学した子が604人で、両方を合わせて681人になります。越谷市や入間市の就学指導結果から、年によってちがいはありますが、特殊教育が望ましいとされて普通学級に行った子のうち、就学児と在学児の割合は1対2くらいと仮定してみます。すると227人が特殊教育の判定を受けて普通学級に行った子と推定されます。このほかに「軽い障害児で通級(普通学級)向き」と判定された子がいるはずです。このような要素を総合すると、特殊学級に在籍している子供(小・中合わせて3420人)と普通学級に在籍している障害児(とみなされている子)の数はあまり変わらないのではないかと思われます。その3〜5割が通級指導を受けているということでしょうか。ところで、特振協第2小委員会に出された進学状況図では、中学の普通学級から養護高等部へ入学する子は毎年30〜60人とされていますが、上記の推計によれば、この数は中学普通学級を卒業した障害児の1〜2割にすぎないことになります。多くの生徒たちは、狭い高校の門からでもなんとか潜り込んだり、専修学校等に入ったり、不安定ながらも就労の道を掘り進んでいるということになるのです。
 局が作成した進学状況図では普通学級にいる障害児の数がわからないとしているにもかかわらず、小・中とも特殊学級在籍者の3分の1足らずにすぎないかのように描かれています。さらにインチキなのは中学卒業後の進路の図です。「障害のある児童生徒の進学状況」と銘打ちながら、盲ろう養護学校中学部と中学特殊学級の生徒の進学状況しか描いていないため、紙面の8割が盲ろう養護学校高等部に占められており、そこに「高等部の過密状態」という吹き出しが入っています。普通学級の障害児の存在とその進路状況を全面的にカットしたウソの資料です。
 第2小委員会では、育成会の井上委員から高校入学の課題が提起されたにもかかわらず、宮崎委員長は「高校は選抜があるのだから」という言葉で切り捨て、高等養護学校の設置について委員会として了承すると結論付けてしまいました。

傍聴しがいのあった第一小委員会

 いっぽう、6月23日の第1小委員会では、つっこんだ議論が行われ、傍聴している私達もエールを送りたい場面もありました。
 資料は第2小委員会に出されたものと同じでした。局の渋沢氏は、知事の「普通学級籍」の具体化であるとして「主籍従籍」について説明しました。文科省の言っている「盲ろう養護学校を特別支援学校に」・「特殊学級を特別支援教室に」・「普通学級内のLD、ADHD等とされる子供を特別支援教育の対象に」というこれまでの分離教育の維持・拡大の方向とほとんど同じでした。それを県・市町村段階で進めるために「主籍校」(これまでの在籍校と同じ)のほかに「従籍校」を県・市の負担で指定し、学校行事への参加とか通級等をさせるというもの。
 「最終的な主籍・従籍の決定については本人・保護者の意思尊重」と言っていますが、あくまでも「望ましい主籍・従籍がどこかは就学指導委員会が判断する」ことを前提としているのですから、その判断に逆らえば「本来ここに来るべきでなかった子」として扱われるのは今と変わりません。「本来はみんな地域のクラスの子どもだよ」という「普通学級籍」の大切さを踏まえ、「初めに判定ありき」という「就学指導」をやめ、どうしたらい続けることができるか、相談・支援してゆくことが問われているのです。
 第1小委員会の委員発言の一部を紹介しておきます。

 関根委員(中央児童相談所長):私は基本的には全員が通常学級に籍をもつのが基本になると考える。
 飯塚委員(熊谷市教育長):これまで積み上げてきた特殊教育をもっと発展させてゆくのか、縮小するのか。これまでの教育がなくなるのかという不安があると思う。
 倉沢委員(県PTA連合会会長):地域に生まれた子供はできればみな地域の学校に行き、その中から必要な場合はきちんと専門教育を。
 品川委員(北埼玉県政モニター協議会会長):就学指導委のあり方について質問。希望を優先してふりわけてきたのか?そうではなくて障害の重さによりこちらが妥当ということで上から振り分けてきたのか?
 金子委員長(明治学院大教授):通常学級の在籍数が入っていないが、就学指導結果とからめるとどのくらい、どういう人が入っているのか?どうしても障害のあるお子さんについてどうかと考えやすいが、すべての子供にとっての教育環境をつくっていくことを考えるべき。通常学級から特殊学級、盲ろう養護学校へ移られたお子さんがおられるということについて、(そもそも通常学級よりも適切な教育がほかにあったのではないかといった考え方に走る前に)通常学級在籍中にどういうサポートが得られたのかも考える必要がある。いま現在在籍しているお子さんの通常学級でのサポートがどうなっているか、ノーマライゼーションということを考えた時、どういうサポートがあれば続けられるのか、そのあり方も考えないと。
 林委員(県立本庄養護学校長):たとえば「就学指導委」という名前を「就学支援相談委」と変えたら、思いが伝わってくるのではないか。