大きくずれ始めている特振協を監視しよう |
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前号で特別支援教育振興協議会の「中間まとめ」への疑問をお伝えしました。「中間まとめ」への意見募集は10月3日に締め切られましたが、多くの疑問・反論が寄せられたと思われます。この意見を踏まえて、最終報告が10月30日の全体会議で検討されることになっており、そこに出される内容が17日の第2小委員会と21日の第1小委員会で検討されることになっています。
もともとこの特振協は、3月に発表になった「彩の国障害者プラン21」において「分け隔てられることなく」という基本理念が確立され、それに基づき教育の分野でも初めて「共に学ぶ新たな教育システムの整備について、外部の有識者も含めた検討委員会を設置して、さまざまな観点から検討します」という施策が盛り込まれたことが出発点でした。これを受けて、前知事の年頭の「全障害児に普通学級籍」宣言もありました。しかし、会議予算の都合ともいわれますが、新たな検討委員会の設置ではなく、休眠中だった「特殊教育振興協議会」をリニューアルする形となり、本来の課題ではない養護学校高等部の教室不足対策まで(第2小委員会として)抱え込むことで、課題そのものをあいまい化してゆくことになりました。
かんじんの「共に学ぶ新たな教育システム」の部分でも、出発点がどんどんあいまいにされ、文科省の「特別支援教育」にいかにつなげるかといった方向に流れてきました。
今回の「中間まとめ」では、「就学指導」について次のように述べています。「ノーマライゼーションの理念に基づく教育の実現のためには、障害の種類や程度に基づく就学の場の設定を検討するこれまでの就学指導を、本人や保護者への教育的支援や相談機能を重視する就学支援の観点、学校や学級の枠を超えて児童生徒の学習活動を支援する観点から見直すことが必要である。」(第1章 8頁 4(2))
一見、場を分ける教育をやめ、本来はみな通常学級ということを基本としながら相談・支援してゆこうという考えなのかなと錯覚しそうになります。しかし、あとのほうでは、以下のように述べられています。
「これまで障害のある児童生徒に係る教育は、その障害の種類や程度に応じた適切な教育の場を設定する観点から、盲・ろう・養護学校や特殊学級など学校(学級)の枠に児童生徒をあてはめる就学手続きにより教育効果を上げてきた。こうした就学制度の下で、それぞれの学校の基準に基づいて学級編制が行われ、教員定数が決定され、児童生徒への教科書給与などが行われている。
今後は、こうした現行の就学制度の基本は維持しつつも、児童生徒の『心のバリアフリー化』の推進や障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応するため、学校(学級)の枠を柔軟にする必要がある。盲・ろう・養護学校と小中学校の児童生徒による現行の交流教育を、『心のバリアフリー』を育む観点から発展させ、他の学校の児童生徒でなく自分の学校の児童生徒として交流することが必要であり、そのためには学籍管理を工夫することが効果的であると考えられる。また、小中学校の通常の学級や特殊学級に在籍しながらも、学籍管理を工夫することにより、盲・ろう・養護学校で社会的自立につながる教育を受けることも可能となる。こうした学籍管理を工夫するための新たな学籍として『支援籍(仮称)』の創設が必要である。」(第2章12頁(2)ア)これでわかるように「現行の就学制度の基本は維持」なのです。「学校や学級の枠を超えて」というのは、場を分けることを見直してゆくのではなく、場を分けた上での「交流教育を……発展させ」るということでした。具体的には、県単の新たな通級の制度として「支援籍」を設けるというのがポイントです。これでは、「共に学ぶ」どころか、現在よりもさらにさらに場を細かく分けてゆく就学指導に道をひらくことになってしまい、「分け隔てることなく」を基本とした彩の国障害者プランとはまさに正反対の方向に行ってしまいます。
この第2章12頁(2)アの部分については、たとえば以下のように改めるべきなのです。「これまで障害のある児童生徒に係る教育は、その障害の種類や程度に応じて教育の場を分けることが適切であるとする観点から、盲・ろう・養護学校や特殊学級など学校(学級)の枠に児童生徒をあてはめる就学手続きにより、地域で共に学び共に育つことを阻んできた。こうした就学制度の下で、それぞれの学校の基準に基づいて学級編制が行われ、教員定数が決定され、児童生徒への教科書給与などが行われている。今後は、こうした現行の就学制度の基本を改め、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学び共に育つことを基本に置き、『心のバリアフリー化』を推進してゆく必要がある。盲・ろう・養護学校の児童生徒が現行の学校間交流教育にとどまらず各々の居住地の通常学級に参加し、他の学校の児童生徒でなく自分の学校の児童生徒として交流することが必要であり、そのために県としての支援策を本格的に検討することが必要である。」
(山下の意見書より)終盤に入った特振協が彩の国障害者プラン21の具体化にとっての最大の壁を築くだけに終わることのないよう、みなさん傍聴に出かけましょう。