「分け隔てられることなく」・「共に学ぶ」が附帯決議に入る

改正障害者基本法 教育の欠格条項をなくす会準備会の要請に応じ

5 月27 日の参議院内閣委員会で、障害者基本法改正案が決議されましたが、その際、これに併せて、教育の欠格条項をなくす会準備会で要望してきた「分け隔てられることなく」、「共に学ぶ」という文言の入った次ページの附帯決議がなされました。

なお、内閣委員会の審議のもようについては、次のUR L でビデオが見られます。
http://www.webtv.sanglin.go.jp/webtv/library/result.consider.php


5 月10日の国会要請行動(議員会館で)。奥で立っているのは堀利和議員。埼玉のメンバーの顔が見える。

 なぜ附帯決議のこの部分が必要だったかといえば、今回、障害者基本法に「差別禁止」を盛り込む等の改正がなされたにもかかわらず、教育の部分に関しては当初の案には「交流教育」しか書かれておらず、明らかに文科省の「分ける教育」を肯定するものでしかありませんでした。「差別禁止」を求める障害者関係団体も、教育については関心が薄かったのです。その後、各方面からの働きかけで、「交流教育と共同学習」という文言に差し替えられました。ただ、この「共同学習」という表現は、基本的には場を分けた上での特定の学習場面での「共同」とも取れるし、「共に学ぶ」とも取れるという、あいまいなものでした。
 そこで、教育の欠格条項をなくす会準備会などが議会に働きかけた結果、予定されていた附帯決議の中に「分け隔てられることなく」と「共に育ち学ぶ」という文言を入れることができました。法律の条文そのものではなく、あくまで附帯決議にとどまりましたが、国会の場で初めて「分け隔てられることは差別であること」が論議され、決議に盛り込まれた意義は大きいといえます。
 なお、附帯決議の全体は、さまざまな団体の要望を総花的に盛り込んでおり、「分け隔てられることなく」というトーンで貫かれてはいません。その反対に分けてゆくことを進めかねない内容もうかがえることを付け加えておきます。

平成1 6 年5 月2 7 日
参 議 院 内 閣 委 員 会

障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議( 案)

政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に向け万全を期すべきである。

1 . 障害者施策の推進に当たっては、障害者の個人の尊厳にふさわしい生活を保障される権利を確認した法第3 条第1 項の基本的理念を踏まえ、障害者が、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすることを基本とすること。

2 . 障害者の雇用・就業、自立を支援するため、障害者の地域における作業活動の場の育成等を推進するとともに、併せて精神障害者の雇用率の適用・復職支援、在宅就労支援を積極的に推進するため、これらについて法的整備を含め充実強化を図ること。

3 . 障害者に対する障害を理由とする差別や権利利益侵害が行われた場合の、迅速かつ効果的な救済のために必要な措置を検討すること。

4 . 情報バリアフリー化の推進は、障害者等のコミュニケーションの保障に資するべきものであることにかんがみ、情報通信機器やアプリケーションの設計面のみならず、コンテンツや通信サービスについても、手話、文字、点字、音声等の活用による改善及び充実を促進すること。

5 . 障害のある児童・生徒とその保護者の意思及びニーズを尊重しつつ、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこと。

6 .「障害者」の定義については、「障害」に関する医学的知見の向上等について常に留意し、適宜必要な見直しを行うよう努めること。
 また、てんかん及び自閉症その他の発達障害を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、継続的に生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。

7 . 国連における障害者権利条約の策定等の動向を踏まえ、制度整備の必要性について検討を行うこと。

右決議する。