「分け隔てない教育」国会で論議!

障害者基本法改正 「差別禁止」と「ともに学ぶ」が課題に
第1 5 9 回国会参議院内閣委員会会議録より(抜粋)
2004年5月27日 委員:岡崎(民主)、魚住(自民)、小林(共産) 衆議院議員:原口(民主)八代(自民)、福島(公明)

 5月27日、身体・知的・精神の各障害別の福祉法の上に立つ「障害者基本法」の改正案が参議院内閣委員会で決議された。その際、「分け隔てられることなく」と「共に育ち学ぶ」が入った附帯決議がなされたことについても、TOKO 前号で報告した。今回は、この内閣委員会の審議内容の抜粋をお伝えする。
 国会の法案審議でこのように与党を含み、「共に学ぶこと」が語られたのは、おそらく初めてのことではないか。「教育の欠格条項をなくす会準備会」のシンポジウムや国会要請行動のひとつの成果といえるだろう。

岡崎トミ子君 … この改正の趣旨として、差別、すなわち分け隔てのないこと、このことが大事だというふうに、重要なポイントと考えておりますが、教育面についても同じでしょうか。

衆議院議員(原口一博君)…正に、いま委員ご指摘のように、教育の現場、元々障害者御自身に教育を選択する権利がある。この地域において、自分のお住みになっている地域において、その教育を、様々な教育を積極的に選択していく、この権利をこの法律の中で読み込みたいということで協議を進めてきて条文に落ち着いたところでございまして、私達は、正に権利を保障するためのこの法律でございます。

岡崎トミ子君…学校教育法施行令が一昨年改定されましたが、… 2 0 0 1 年… 1 2 月12 日には、当時の池坊政務官ですね、お出になってくださいまして、実はそのときにこういうお約束をしてくださいました。2 2 年間特殊学級があり、手厚い教育をやってきたと思っていたが、… 一人への教員の加配が多いから手厚いのではない、一緒に学ぶということが社会への参加なんだということを伺って、本当にそういう視点からの研究がなされていなかったという懸念があります。… 一人の痛みを分かりましょうと口で言うよりも、実生活で自分とは違った人がいるんだということを認識することが大切であると考えている。… そのときに、通常学級に学ぶ子ども達、この実態調査をお約束していただきました。
 文部科学省、今回、このように障害者基本法が改定されるに当たって、当然教育の問題について、重要なポイントにもなってくるわけですから、その実態調査をされたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(金森越哉君)…先生ご指摘の通り、普通学級に学ぶ障害のある子どもの実態を調査すべきとのご指摘をいただきまして、当時の大臣政務官から前向きな回答をさせていただいたところでございます。… まずは認定就学者の状況を把握することといたしまして、平成1 5 年度から都道府県教育委員会を通じて認定就学者の実態の把握を行なっているところでございます。それによりますと、比較的状況をよく把握している都道府県におきましては、例えばその県内の平成1 5 年4 月入学者のうち、… 合計4 0 名が認定就学者であったなど、具体的な状況が把握されている県もございますが、その一方では… 市町村ごとに回答の基準がまちまちでございまして、… 必ずしも十分な把握ができていない県もあったところでございます。… 現在、私どもでは制度実施から1 年が経過した時点での状況という観点から、改めて各都道府県に対する調査を実施しているところでございます。普通学級に学ぶ障害のある子どもの実態につきましては、この認定就学の調査の一環として把握してまいりたいと考えているところでございます。

岡崎トミ子君…しかし通常学級に通う子ども達もどんどん増えているという状況なわけなんです。この子ども達の存在をどう考えるのか。八代議員にお伺いしたいと思います。

衆議院議員(八代英太君)…私も、基本的には、健康な子どもは近い学校に行けて、障害を持つと遠くの学校へ行かなきゃならないということが、そもそも私は心に引っかかるものがございます。… 今の養護学校を否定するつもりは全くありませんが、それは大切なことだと思いますが、基本的にはその子にとってどの学校がいいかは当事者があるいはその親御さんが判断するというのが今後の私は流れになっていくだろうし、そういう方向性を見出すために交流あるいは共同学習というものは、私は、この基本法では、プロローグのような思いをもって立法に当たった次第でございます。

魚住裕一郎君…要するに差別しちゃいけないよという言い方であるわけでございますが、逆に1 8 0 度ひっくりかえして分け隔てなく社会参加できる権利というものを発想して、そういうことによってこの社会への完全参加が保障されていく、もちろんそういう権利があっても侵害される場合は、状態もあるでしょう。しかし、やはりこの見方というものを大きく変えていけるのではないか。先ほども教育の関係について質問ございましたけれども、やはり教育を分けることをしないことによって、ともに育ち、また学ぶ教育になっていくんではないか、そういうような私、思うところでございますが、この辺りについてのご見解はいかがでございましょうか。

衆議院議員(福島豊君)…今回の改正におきましては、教育に関する条文に新しい1 項を設けて、ともに学ぶということをそこに規定したわけであります。…一つは、まず前提として先ほど原口先生の方からご指摘ありましたけれども、学ぶ場を選択する権利、ともに学ぶ権利という権利性がまず一つあるんだろうというふうに私は思うわけであります。そしてまた、同時に個々の状況に対応してその発達を最大限に支援するような、ニーズに応じた支援という観点がもう一つあるんだろうというふうに私は思っております。… 今回のこの改正というのは、障害者が差別されてはならないと、そういう差別の禁止についての理念を設けると同時に、ともに学ぶということを同時にお示しをさせていただいて、前回の改正のときにいろいろと議論になったことについて、一定の私は前進をここに記すことができているんだろうというふうに思うわけであります。

小林美恵子君……今の障害の種別に応じた教育というのは、私は歴史的な役割を果たしてきて、障害児の成長を支えてきたというふうに思うんですね。… そこには個々の障害に応じたやっぱり丁寧な教育が施されるという点での選択があるというふうに私は思うんですね。今回のこの1 4 条に関してですけれども、その障害児学校、学級のその役割を踏まえての交流ということで理解をしていいでしょうかということをお聞きしたいと思います。

衆議院議員(八代英太君)…私は養護学校は養護学校としての機能と申しますか中身というものは評価をする。しかし、普通学校という中で健康な子どもと障害を持った子どもが、大人の社会は統合されているのに子どもの世界では分離されているということもまた一方ではいろんな事件が起きたりする、また悲しみを訴える方も多いというならば、そこは親御さんと地域の教育委員会がよく相談し合って、お互いに双方向で交流しあいながら、地域でともに生きるというのが本来の姿だというふうに思っております。