2004 年6 月18 日 (県側:田部井指導課主席指導主事、朝海指導主事《窓口》) どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会
どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会等の教育局交渉が、6月1 8日に職員会館で行なわれた。この交渉は1988年の教育長との深夜の対話集会以後、「教育長の意を体して」高校担当課、義務教育担当課をはじめ特別支援教育課など関連各課の課長補佐級の担当者が顔をそろえ、高校の指導担当課の主席がまとめる形で年5〜6 回行なわれてきた。この交渉の中で、県の通知の改正や代筆受験や定員内不合格にされた生徒をどう受け止めていけるかといった重要な課題が語り合われてきた歴史をもっている。しかし、主席は毎年入れ替わり、ゼロからのスタートになることもある。今回の交渉は、特にそれを痛感させられた。 |
主席:つめて言うなら、教員研修の扱いをどのように考えているかが、今年度のポイントと認識している。いくつかの高校に参りまして、そこで学んでいる生徒の状況やお話を聞いてきた(朝霞、吉川、大宮商業、浦和一女)。課題が大きいなあと感じている。本県は教員の研修を非常に取り組んでいる県。その中で障害児の内容を扱った研修も増えてきた。それらの研修を詳しく皆様にお話しながら、今後の課題を進めていきたい。連絡会:なぜ要望項目に対し、一つ一つ回答がないのか。
朝海:私のてちがい。
連絡会:責任者の主席が説明すべき。
主席:要望書及び昨年の連絡会の提案を踏まえて回答した。
連絡会:4年前、朝霞高校で研修したときかかわった。研修をやったことで、翌年入学している。その経験が生かされないで、そちらで今年検討して…というのは理解できない。
連絡会:朝霞で8年間落とされ続け、何とかしなくてはということで始まったのが研修。定員内不合格が出てしまい、現場の先生の意識が変わらないとということで、当時の主席がすごく動いて何度も足を運んだが、自分の口からはうまく伝わらないということで、こちらに講演依頼があった。全職員の前で、障害のある人々の状況を話した。おどろいたのは、大柄な体育の教師が「恐い」と言ったこと。専門知識がないのでうまくつきあえないのではということが、「恐い」という表現になった。私達もうまくつきあえないが一緒に考えている、悩みながら一緒に付き合ってほしいと話した。講演の後、当初は7日間の研修と言ったが、県のほうが9日間とした。当時の主席は地域活動の場にも来て、一緒に相談した。こちらからの提案ではなく、主席のほうからの提案で研修をやってくれということになった。あらから何年もたったのに、落とされ続けているのは、教育局のやる気の問題。教育局が何かをしないとという思いをもっていただかないと。
主席:教育局としては、定員内不合格はあってはならないという認識で指導している。ただ合否は学校長の判断。
連絡会:今までの担当も学校、校長に話しているが、伝えるだけの内容をお持ちなのかということ。朝霞の研修のときの主席は何度も活動の場に話しに来られて、「ほんとうに話の通り、やっておられるんですね」とおどろいていた。やっているけれどうまくいっているわけではない、うまくいってないがやっているということだけは伝わった。その後そういう主席はいなかった。
連絡会:浦和一女、大宮商業で定員内不合格で切り捨てられたことに関し、きちんと対処してゆくことに関し、前任者から引き継いでいるか。
主席:前任者はそのように理解していない。特定の高校についてではなく、一般的に全体の高校についての対応をしてゆく。
連絡会:障害児理解のための一般的研修ではなく、定員内不合格を解消するための研修と位置づけていいか。
主席:いま県が行なっている研修を否定するような発言には同意できない。研修の内容そのものは、非常に幅広い障害児の理解を前提としないと成り立たない。定員内不合格というのは認識にある。
連絡会:朝霞や吉川を見学されての感想は。
主席:朝霞で佐久間さんのお嬢さんの授業を見学した。保育の時間で佐久間さんは別メニュー。授業は45分しっかり進み、生徒は保育についてレポート。佐久間さんも別にレポートを出していたなと。吉川では数学と国語。取り組みの様子は、正直な話、どのようにその1時間、45分を学んだのかなあというはっきりしないものを感じた。授業の内容ははっきり理解が進んでいるのかなあと。教員が準備するときの苦労もわかった。両方とも高3の授業だった。
連絡会:入学したからこそ、そういう対応をどうしたらという話になる。その前に、さっきの体育の先生が「恐い」と言ったような障害のある生徒に対する先入観をなくしていくことが必要。障害による不利益を明確に。
主席:二つの高校で生徒の実際のようすを見て、コミュニケーションが不足してるなあと。教員と生徒だけでなく、生徒間のコミュニケーションが。3年間だからもう少し取れているのかと思ったが。前任者からも「ある特定の人の合否につながるような研修は研修といえない」という話があった。
連絡会:「合否に関わる研修はおかしい」という認識こそおかしい。本来あってはならない定員内不合格を出したことに対する研修だ。教員に力がない、学校に力がない、ごめんなさいということ。これは確認書で取っている。やるとしたら、どうしたら定員内不合格を出さないですむのかという研修計画を学校に出させるべきだ。それに対して前向きにつきあっていくことが、教育局のやるべきこと。
主席:確認書は読んでおり、そういう確認をしたという認識はある。ただ、高校というところは、その学校の教育を受けるに足る能力・適性が前提になる。校長は、就学に対する、学校に対する意志が汲み取れないと言っていた。
連絡会:「能力・適性」については、0点であっても校長が「能力・適性がある」と判断すればいいこと。そもそも「障害による不利益があってはならない」という通知に関して、かっては「身体に障害」とされていたのが知的障害等も含んだ「障害」に変わったことをどう考えているのか。試験や面接という制度自体が「不利益」な障害のある生徒に対して、まずはあってはならない定員内不合格をなくすことで間接的に少しでも「不利益」を減らそうという話だったはず。「就学に対する意志」というが、自分自身みんなが行くから高校行ったんであって、特別な「意志」などない。「意志が汲み取れない」から定員内不合格が許されると思う校長の意識こそあってはならないこと。そういう意識も含めて変わってもらうために、教育局が高校に対し定員内不合格を解消するための計画提出を義務付けるという提案は賛成。営利企業ですら雇用率という社会的責任を果たせない場合は、国から雇用率達成のための計画提出を義務付けられているのだから。
連絡会:うちの娘は学ぼうとする意欲は小学校の頃からずっとあった。学校でトラブルがあり迎えに行ったら、帰るのイヤだと泣いた。つぎからおとなしく行った。7年間高校を受け続けたのは、私は面倒くさかったが、この子が学校行くというから。障害者の理解というが、特別な理解はいらない。いたれりつくせりもいらない。理解しようと思わない教師が意外と本人と合ったりする。「普通」を学んでほしいから学校に行かせている。親も子どもが「普通」に生きていくためのかかわりはわからない。だから学校に行く。
連絡会:何回も受けていることが、何よりも意欲の表現。
主席:学ぼうという、そういう主体的なことが、本人の表現で現れてこないと。
連絡会:今日感じたのは、要望書を出して、これだけの人が来て、私達なんか2年も落ちているのに、要望も読んでないのは失礼。すみませんですむことじゃない。
(この日は、連絡会として、教育局側が指導課だけで関連する他の課がそろっていないのでは交渉にならないと判断し、早急にきちんとした交渉を改めてやることを確認し、時間前に切り上げた。)
高校現場を見学して「コミュニケーションが…」などと口にしながら、八木下氏(右)の発言を聞き流していた主席(左)。「わからなければそばに寄って。聞き返して。」の声に、やっと机の前に。聴く姿勢をとることから「コミュニケーション」は始まるのです。