中央教育審議会は初等中等教育分科会に特別支援教育特別委員会を設置して制度のあり方に関する検討を重ねてきましたが、このほど「中間報告」を取りまとめて公表することになり、その素案が出されました。この素案には文科省の現在の考え方がよく示されています。
まずこの夏埼玉県が行った調査と同じものを文科省は2年前に行っていますが、その結果について「通常の学級に在籍している児童生徒のうち、LD、ADHD、高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている者が6%程度の割合で存在する可能性が示されており」と述べています。「LD、ADHD、高機能自閉症の診断ではない」と言いながら、「LD、ADHD、高機能自閉症の疑いある者の洗い出し」であったことを、国自らが認めています。このような問題のある調査を、県が県内すべての学校のすべてのクラス担任にやらせた責任は重大です。
つぎに現在の盲聾養護学校を、障害種別を超えた「特別支援学校(仮称)」とする制度改正が提案されています。ただ、一律でなく地域の事情に応じて整備していくとしており、「「可能な限り複数の障害に対応」とか「同一障害の児童生徒による一定規模の集団」とか「各障害種別ごとの専門性」など、中での「分け方」について考慮すべきとしています。また、小中学校にいるLD。ADHD等の児童生徒に対しては、「小中学校等における特別な指導内容・方法が十分に確立されていない状況にかんがみ」、「特別支援学校が高い専門性を生かし」、教員や保護者に対する相談や子供に対する通級指導、巡回指導などが提案されており、地域の情報やセンスを知らない盲聾養護学校の「常識」がそのまま通常学級に持ち込まれてくる危険性を感じます。
いっぽう現在の固定式の特殊学級を廃止して通常学級に在籍させて必要な時間のみ特別な場で教育する「特別支援教室」案については、当面は研究段階にとどめ引き続き検討するとしています。代案として、通常学級に在籍するLD、ADHD等の生徒への支援を特殊学級の教員が行うなどの方向や、通級指導についてその対象にLD、ADHDを加える等の見直しを行うといった現行制度の弾力的運用が提案されています。分離を原則とした就学の根幹には手をふれないままで「通常学級在籍」を語る矛盾があらわになりました。
就学については、「十分な制度の周知を図りつつ、保護者の理解を得られるような形で就学指導を」という決まり文句で終わっています。高校については、「高等学校に在籍しているLD、ADHD、高機能自閉症等の生徒に対する指導及び支援のあり方」について検討が必要という「洗い出し」の発想のみで、障害児に門戸を開くことはまったく考えられていません。