共に育つ道を阻む県立高校

 8月23日、今年度2回目の高校問題交渉が行われました。県教育局は「特振協」で約束した「定員内不合格の検討の場」すらホゴにし「高校教育指導課が窓口」と言ってはばかりません。小・中の通常学級に3千人の障害児がいるのに、高校では100人足らずに減らされ養護高等部が満杯になる原因を造りだしているのは教育局自身です。ここを突破せずに、「共に働き・共に暮らす社会」はひらかれてきません。次回の交渉(11月初め?)にはあなたもぜひ。


第2回高校問題教育局交渉 要望と回答 2004.8.23

1.「障害のある生徒の埼玉県高等学校入学者選抜学力検査出願の際の留意事項及び選抜の際の取り扱いについて」の通知で、“身体に障害のある”を“障害のある”に変えた経過があります。身体に限らず、どんな障害があっても、障害が重くても、不利益な取り扱いがあってはならないということでこのように変えました。主席の発言の中で、コミュニケーションがとれない(とれるか、とれないか、はっきり言えないものだと思うが)者や入学したいという意思がない(わかりにくくても、受験をするということはその意思があると思えるが)者は、選抜において別扱い、つまり能力・適性がないということで定員内不合格になっても止むを得ないとも受け取れる発言がありましたが、このことは、障害があることによる“不利益な取り扱い”であり、この通知の趣旨に反する“不利益な取り扱い”に値するものではないでしょうか。
 1984年の初等中等教育局長通知では、一律に高校教育を受けるに足る能力・適性を有することを前提とする考え方を採らないことを明らかにしており、また、現在の高校への進学率は97%といわれ、多様な能力・適性、意欲・関心等を持つ生徒を受け入れている中で、障害のある子たちについては能力・適性を強調するのは問題です。

(回答)
 6月18日の話し合いにおいて、「定員内不合格になってもやむをえない」という趣旨の発言はなかったと認識しています。さらに、各高等学校においては校長を委員長とする選抜委員会を設けて厳正に選抜を行っており、また学校・学科等の特色に配慮しつつ、障害のあるなしに関わらずその教育を受けるに足る能力・適性などを判定して行っております。

2.朝霞高や吉川高の見学、大宮商業高や浦和一女高の目的が何であったのか、再度お聞かせください。コミュニケーションが不足しているとか、教員が準備するのに苦労しているとかの報告がありましたが、受け入れている高校ではどのように工夫や努力をしているのかを評価し、それに対して県教育局としてどのような支援が必要かといった報告がなされるべきではないでしょうか。また、定員内不合格を出している高校に対しては、その理由は何かを明らかにさせ、それに対して県教育局としてどのような解決策を出すのかといった報告がなされるべきではないでしょうか。
 企業の障害者雇用の啓発のために、雇用が進んでいない企業名を公表する等行われていますが、定員内不合格を出している高校名を発表し、理由を明らかにして、その解消のための研修を義務付けるべきではないでしょうか。

(回答)
 朝霞高校、吉川高校にお伺いした趣旨につきましては、そこで学んでいる今3年生にいる生徒さんが、どのように生活を送っているのかを見させていただきました。また浦和一女高校、大宮商業につきましては、不合格になっている事実もありますので、その状況について把握するとともに、教育課程の様子、定時制の様子を含めてお伺いしました。
 障害のある生徒を受け入れている学校では、補助教材を使用するなどして個々の生徒にあった指導を行うとともに、家庭との連携を緊密に図るなど、多くの工夫をしております。県教育局としましては、学校で実施する個々の生徒にあった指導が十分行われるよう支援してまいりたいと考えております。
 定員内不合格を出している学校において、個々の合否についてその理由を明らかにすることは、選抜の内容に関わる事項であるため、公表は考えておりません。受験者数が募集人員に満たない場合、可能な限りその全員を入学許可候補者とするよう校長を指導してまいりたいと考えております。定員内不合格を出している高校名を公表することは個人が特定されることが予想されますので、考えておりません。

3.定員内不合格はあってはならないものです。しかしながら、斉藤くんは4年間不合格にされ続け、山田さんも2年間不合格になっています。同年齢の人たちが卒業したり、卒業学年になったりしていることを考えれば、もうこれ以上待てません。あってはならない定員内不合格を出している県としての責任をとって、高校が受け入れていくための具体策を出してください。“繰り返し、強く指導する”では、何の解決にもならないことは明白です。一つの方法として、障害児本人や親、支援者と教員が直接話したり、体験的に登校して生徒たちや教員たちと接してみたりするような“研修”を要望しましたが、特定の学校で行うことはできないとか、現在県が行っているような研修内容をくつがえすことはできないといった回答でした。あってはならない定員内不合格が、特定の人に対し、特定の高校で出されているわけですから、その解消のために、特定の高校で研修が行われるのは当然であるし、そうでなければ、なんら解決していかないでしょう。また、実際に付き合うことでしか、理解は始まりません。早急に実現に向けて取り組み始めてください。

(回答)
 6月18日の話し合いの場で申し上げましたように、埼玉県では初任者研修、十年次研修という国の定める研修に加えて、五年次研修を行っております。その中で、障害のある生徒への対応に関する研修もここ数年増えてきております。ご指摘の特定の学校での研修につきましては、校長・教頭などの管理職に対して障害のある生徒への理解を深める研修を実施することを検討しております。

4.昨年開かれた特別支援教育振興協議会の会議において、高等学校におけるノーマライゼーションの理念に基づく教育の推進に関して、定員内不合格の問題については、議論する時間がないなどの理由で、その場での話し合いはできませんでしたが、「別の機会に話し合いたい」という回答でした。その後、どの場で、どのように検討されているか、その進行状況について知らせてください。

(回答)  高校教育指導課が窓口として対応させて頂きたいと考えております。

5.「障害のある・・・」通知の“・・・介助を行う職員等を配置することはできない・・・”の部分について、この文言があることで、障害がある人は介助が必ず必要であるという意識を持たせてしまうことや、逆に介助が必要な人に高校は対応しないと言っていることになるといった理由から、削除することを強く要求しましたが、“・・・今後、県教育局で研究することとする。”という文言を付け加えただけで削除されませんでした。また、特振協の報告には“高等学校における特別な教育的支援について研究を行う必要がある”と書かれています。その研究結果について知らせてください。

(回答)
 介助を行う職員を配置することにつきましては、法的な根拠がなく、厳しい財政状況でもありますので現状ではできませんが、現在どのよう形が可能なのか研究中であります。また特別支援教育振興協議会の報告に対する研究成果につきましては、高等学校においてのLDやADHDなど特別な教育的支援を要する生徒が在籍していると認識しており、なんらかの支援が必要であると考えております。今後の特別支援教育への転換の取組みの中で、高等学校における支援のあり方について引き続き研究してまいりたいと考えております。

6.「障害のある・・・」通知に基づいて、本人・保護者から出された学力検査の際の配慮事項について、その希望を受け入れ、不利益な取り扱いがないよう、志願先高校長を指導してください。

(回答)
 県教育局として、志願先高等学校においては、その学校の施設・設備などを考慮して、不利益な取り扱いがないよう指示をしているところでございます。


2004年10月 21 日
次回(第3回)の交渉は11月19日(金)午後2時からです。会場は未定ですが、県庁の近くです。障害による不利益がないようにするための受験上の配慮についての今年度「通知」に関しては、この日が事実上最終の交渉になります。ぜひ参加を。