教育の欠格条項 文科省第2回交渉

 10月21日に参議院議員会館で、文部科学省との話し合いが行われました。以下に山下特別支援教育課長の回答要旨と、当日初参加された鳩山邦夫元文部大臣のこの交渉での発言集をご紹介します。なお、全記録を読みたい方は、教育の欠格条項をなくす会準備会( 埼玉県新座市大和田4 − 1 4 − 1ふくしネットにいざ内 п^fax 048−479-3799)まで。
 文科省山下課長は、障害者基本法に盛り込まれた「交流及び共同学習」について学校のカリキュラム外の教育活動や障害のある子どもに対する障害のない子どもの配慮指導といった「交流」の拡大版としかとらえていません。中教審に附帯決議を紹介することすらサボりそうです。「通常学級の障害児」については、「違法ではない」と初めて言明しました。しかし、配慮や支援の責任については、担任と市町村に転嫁する姿勢です。分けない教育を原則とすることに関しては、義務教育制度の基本にかかわることで、特別支援教育課の枠組みを超えていると述べました。また今回の中教審の内容は、その就学指導を温存したままで、これまでの特殊教育の学校・学級をいじるだけでしかないことも明らかにしました。宿題として、全国の就学指導結果をきちんとまとめることが約束さ。たくさんの子ども達が養護や特殊が適切と判定されながら、通常学級で共に育ち合っている実態がつきつけられることによって、その実態になんのかかわりもなく進められてきた「交流教育」や「特別な支援を必要とする児童生徒への教育」といったコトバのむなしさがいっそう明らかになるのではないでしょうか。
 鳩山邦夫元文部大臣は「まだこんな問題が残っていたのか、自らの不勉強を恥ずかしく思いました。」と語り始めました。また「障害児教育の盲・聾・養護学校というのがなぜあるのか、私だってわかりますよ。しかしいったんは全部公教育として普通の小学校で教育をやるっていうのが基本の精神にあって、その中で希望する方々が盲・聾・養護学校へ行くと、時代のニーズも変わってきていることですし」と述べ、「認定就学」を含め「就学指導」を「怪しげなこと」と鋭く批判しました。文科省山下課長はびっくりしていました。

 参議院議員会館にて
 出席者 文部科学省(山下特別支援教育課長、石本指導係長、桜井企画調査係)
 国会議員(岡崎トミ子、石毛^子、鳩山邦夫、中根康浩、下田敦子)
 教育の欠格条項をなくす会準備会、障害児を普通学校へ・全国連絡会、DPI日本会議、全国青い芝の会、共同連、難病のこども支援全国ネットワーク
 その他広島、沖縄、千葉、埼玉、群馬、大阪、東京、愛知、福岡、滋賀、神奈川、富山、長崎等 (以上敬称略)

山下特別支援教育課長の回答骨子です

1.障害者基本法の「交流及び共同学習」の文科省流解釈とは

 この障害者基本法に位置づけられました「交流及び共同学習」でございますけど、私ども従来文部科学省として学習指導要領に基づきました交流教育というものを進めてきたところでございますが、これに加えまして、いわゆる学校のカリキュラムとして行われるもの以外の様々な教育活動がございます。そういったものも含めて幅広い概念としてこの「交流及び共同学習」というものを進めていくという風なものとして理解させていただいててる所でございます。
 また一方で障害のない子どもに対しまして、障害のある子どもへの配慮を指導するということは、当然考えられるわけでございます。今後「交流及び共同学習」をしていく上でも、非常に重要なことであると考えている所でございまして、通常学級担任の理解の推進を含めまして、一層徹底を図っていく必要があるという風に認識をしています。

2.障害者基本法の「分け隔てられることなく」という附帯決議の取り扱い

 社会のノーマライゼーションの進展、あるいは教育の地方分権という観点からH14年度に学校教育法施行令を改定いたしました。それ以前の就学指導のあり方を見直して、その上で認定就学制度を創設したところでございます。この改正内容につきまして、それ自体が障害者基本法の改正あるいは付帯決議に矛盾する形にはなっていないという風に認識をしている所でございます。  (障害者基本法の附帯決議につきましては、)どういった形で(中教審で)ご紹介するか、先ほど申し上げました通り、実は中間報告の原案についての審議を一区切りつけてございますので、しばらくこの特別委員会自体の関係がないという時期に入ってまいりました。 おそらくこの中間報告でパブリックコメントをやって様々なご意見をいただくことになると思います。それをご紹介する中で、再度審議いただくわけですけども、その際に附帯決議についてご紹介するべきかどうか、委員長ともご相談しながら、その時点で検討して参りたいと考えております。

3.通常学級にいる障害のある児童生徒の存在は違法ではない

 現在小中学校に在籍している児童・生徒の中で、障害がある子どもたちで、通常学級に在籍している子どもたちがいるということは私どもも認識しているわけでございますけど、その子どもたちについて、その存在がたとえば違法であるとか言うつもりは毛頭ないわけでございます。で現実にそういう子どもたちが義務教育を終え、上の学校へ行ったり、社会に出たりしているというように思っております。まあそういうことを私申し上げたわけでございます。

4.通常学級にいる障害のある児童生徒への「配慮」・「支援」の責任は

 通常の学級において障害のない児童生徒と共に学習をしている場合があるのは承知しているところでございます。ここで教育上の配慮ということでございますけども、これ担当の教員がきちんと配慮するというのがまず基本と思っております。 障害のある子どもに対して、その障害に応じた適切な対応を配慮する、適切に声かけするとか、色々な学習指導上の配慮を行うといったことが考えられるわけでございます。
 また支援ということでございますけど、いずれに致しましても、これは市町村教育委員会の判断で小中学校に就学をされておられるということでございますので、そういったことを含め、設置者の判断できちっとしていただくべきことであろうという風に思っているところでございます。

5.原則分離の教育の見直しは特別支援教育課の枠を超える

 就学の仕組みというのは、基本に義務教育の仕組みがございます。 市町村教育委員会が要は小中学校をまず指定するという仕組みがございます。私は目黒区に住んでおりますけども、目黒区の教育委員会から、あなたのお子さんはここの小学校に入りなさいという指定がなされるわけです。 その際に障害のある子どもについては、障害の種類と程度によって、いわゆる盲・聾・養護学校の方に行ったほうが良いという判断を市町村教育委員会がなされた場合、盲・聾・養護学校が指定されるという形になるわけでございまして、実はそこのところ、まあたとえば希望に応じて選択するといったような仕組みを考えてみました時に、義務教育制度自体について、そういうものを受け入れるかどうかという議論をしなければなりません。 私、個人的な考えとしてしゃべってますので、そういう意味で、これは非常に大きな学校制度の改変を必要とするという風になってまいります。 言ってみれば日本の義務教育制度自体のあり方と一緒に検討する必要があるだろうと認識しており、そういう意味では大変重い問題でございます。そういうことについて言ってみれば特別支援教育課のみの事情で、いずれやりますとかいうようなことは、なかなかお答えしづらいということはご理解いただければと思うわけでございます。

6.今回の中教審の審議には就学の制度は入らない

 今回の中教審の審議事項は昨年の3月に協力者会議報告として出ている内容の中で、学校制度面にかかわる提言があったわけでございます。具体的には現行の盲・聾・養護学校というものを、より総合的な学校制度にしてはどうか、それから小中学校の特殊学級や通級というものを一体化して、新しい仕組みにしてはどうかということでございます。
 今、議論になっておりますのは、わが国の就学の制度であろうと思います。その制度のことについて、今日いろいろご説明も含めて、お話をさせていただきましたけども、いずれに致しましても、今、中教審で審議をしてます直接審議内容には入っておりません。 その後のことにつきましては、今中教審で中間報告をまとめております。まとめた後にパブリックコメントなどで、ご意見伺うことになっております。まあそういったご意見の中のひとつとして今日の意見も受け止めさせていただこうと思っています。

7.就学指導委員会の判定結果の実態調査はきちんとやる

 就学指導委員会の判定結果というのは、現行制度上、自動的に都道府県教育委員会の方へあがってくる形にはなってませんが、多くの都道府県で実態を把握しているようだというところまではわかってまいりましたので、どういう形で今度私どもの方で把握できるのかということを今、検討させていただいています。実態を把握させていただくということについては、きちんとやらせていただきます。明確にいつまでに、何月何日までにということは申しわけありませんが言えませんが、できるだけ早い段階でとりまとめをしたいと思っています。

鳩山邦夫元文部大臣熱く「統合」を語る!

・質問があるけど、文科省というのは中教審の言いなりなわけ?僕は非常に大きな疑問を感じていてね、審議会が神様だったら文科省はいらない。教育の方針は文部科学省が決める、そうでしょ。ちがうの?

・ちょっとよろしいですか。あの皆さんの話の内容は私よくわかったつもりなんですけど、それに対する中教審がどうとかではなくて、文部科学省としての考え方が表明されてませんよね。 中教審なんてどうでもいいとは言わないけど、教育を司る役所であるならば、皆さん方のお話やご希望がどういうものであるかわかっているならば、それにダイレクトにできるだけ答えてもらいたい。
 私本当に悔しい思いをしたのは、岡崎先生からこういう問題の話を聞いて、関係者の方に来ていただいたときに、あら、まだこんな問題が残っていたのか、自らの不勉強を恥ずかしく思いました。 私が大臣をやってましたのは、もう10年以上も前のことでございまして、その時特殊教育課長の霜鳥さんという方、現在は高専の校長先生をやっておられると思いますが、たまたま年が一緒でございましたから、非常に親しくて、大臣室へしょっちゅう来ていただいて、レクチャーをしたり、相談をしたりしました。
 その時に私が彼から聞いた言葉は、「インテグレーション」という言葉でした。今までの特殊教育は分ける分けるでやってきたけども、もう時代のニーズはそういう方向には行かないだろう、「そうだよね」私はそういう風に言いました。ノーマライゼーションという言葉がよく使われるけど、あんまりいい言葉じゃないんじゃないか、ノーマライゼーションって「正常化」って訳すんでしょ。ノーマルとノーマルじゃないなんて神様だって判断できないわけですよね。 それを勝手に基準を作って障害があるとかないとか、山下清の話を聞いていると、彼がまったく正常で、欲得で生きてる我々のほうが不正常なんじゃないかと思ったという話を聞いて、私は非常に感動しましたけど、ノーマルかノーマルじゃないかというノーマライゼーションていうんじゃなくて、インテグレーションなんだと、霜鳥特殊教育課長は力説したんですよ。これからは統合していくんだと、それが重要なんだと、もう分ける時代は終わったんだと。
 そういう話をさんざんされたもんですから、私は文部行政、教育行政の中で、そういう方向に進んでいってるんだろうなあと思っていたら、なんか逆行しているようなことで、自らも安心しきってて不勉強だったことは恥じなきゃいけないし、申し訳ないことで、まあこういう問題が残ったままで、皆様方を苦しめている、満足させてない、そしてその分け隔てることであれば、認定されてなくても、まあインテグレーションに沿うもので、普通の学校へ行ったら一切面倒見ませんというようなことを、地方の教育委員会で言ってもかまわないと。
 そんな馬鹿なことはないと思って、私はもっともっと勉強しますが、やはり文部科学省としてはどういう方向に行くかと、自分たちの好きな団体だけ中教審に呼んでうまくやろうなんてのは、もうやめたほうがいい。私はそういう意味で中教審ではなくてですね、課長として堂々と主張してね、皆さん方のためにがんばってくださいよ。

・じゃあもう一言だけ、社会参加と自立、わかるんですよ。そのためにどうしたらいいかということで、霜鳥特殊教育課長はいつも私に熱弁ふるって、分けるんじゃない、じゃあ完全に一緒か、それはインテグレーションという概念なんですよ、特別に面倒を見なけりゃいけない場合いろいろある、だからそれをインテグレーションという言葉で表現するんですよと、日本語ではなんて言うの?統合って言うんですかね、とそっちの方向で熱弁をふるってた。 その目的は社会参加、自立、一人ひとりの個性やニーズに合わせて、社会で立派に生きていけるように教育をするということ、それはわかるんだけど、そのためにインテグレーションという方向に大胆に踏み出そうとする文部科学省としての方向は消えてしまったんですか?当時そこまで霜鳥課長が熱弁をふるった方向はいつかまたU ターンしてしまったんですか?答えてください。

・私も文京区でしたが、うちの子どもたちが6歳になった時に、あなたの所の子は文京区のこの学校ですというのが来たんですね。 文京区役所役の教育委員会はうちの子を見に来ていないわけですよね、一方的にそういうのが来るんですよね。 とすると認定就学制度ってどういう仕組みなの? つまり私が申し上げたいのは、義務教育っていうのは6歳になったお子さんをその地域で義務教育をするっていう、受けさせる義務はあるけれど、教育をする義務があるでしょ。 それが障害があるかないかって誰も判断できないでしょ、見に来てないんだから。 義務教育という仕組みは、文京区であれば文京区立の小学校が教育の責任を負うんだと、だから認定就学ってどういうやり方をするのかなと思うんだよ。

・(就学時健診がある)ということは、そこで差別化をやるわけじゃない。 たとえばね、私が文部大臣をやってる時に、栃木県の真岡というところにどうしても視察に行ってくれと言われ、何でいくんだと聞いたら、そこにアラブ系の人たちがいっぱい住んでいて、子どもがそこの小学校にいっぱい入ってきてると、それでアラビア語しかわからないからアラビア語の教科書も作らなきゃならんから、ということで私は行ってきた。 アラビア語しかわからない人まで市立の小学校に入ってくるから一所懸命面倒見るわけですね。
 障害児教育の盲・聾・養護学校というのがなぜあるのか、私だってわかりますよ。しかしいったんは全部公教育として普通の小学校で教育をやるっていうのが基本の精神にあって、その中で希望する方々が盲・聾・養護学校へ行くと、時代のニーズも変わってきていることですし、そういう方向に行くべきではないかなという風に思うし、その認定というのは怪しげではないかと感じます。
 さっきも言ったように、どっちが正常でどっちが障害って誰が判断するんですか。障害者基本法をちょっと見た時に、障害というのをどんどん謳っているのも、本当はちょっとおかしいんだよね、じゃあ障害って一体何なんですか?っていう話でね、介護保険のランク分けとはちょっとわけが違うんですよ。
 だから私は精神として認定就学というのを怪しいと思うわけです。 それで怪しげな判断をされて、だけど私んとこの子は普通に小学校に入れましたというと、めんどう見てくれないって言うんでしょ、そういうことに疑問感じますよね。