2002.11.28
1.本来は障害のある子もない子も地域の通常の学級で共に育ち・共に学ぶことが大切であるが、現状ではそこで学ぶための理解や支援が十分に整っているとはいえない状況があるので、親子がそれを望みかつ必要性が認められる場合には、特殊学級や盲・聾・養護学校も用意し、そこでの教育を選択できるようにしている。 |
1: 「本来は障害のある子もない子も地域の通常の学級で共に育ち・共に学ぶことが大切である」という基本に立つなら、文科省がその省令(学校教育法施行令)で示している障害の種類や程度によって適切な就学先をふりわけることは、まちがいのはずです。2: 「分け隔てなくともに学び育つことができるように、多様な支援方法を検討」はその後どうなされたのでしょうか。
3: 「通常学級を希望している保護者に対して養護学校がいかに適切なところかを説くといった対応」が相変わらずまかり通っています。
4: 「今後も必要に応じ、緊急雇用対策の予算なども活用して、配置を検討してゆく。保護者に対して付き添いの強要はしない。」これもなおざりになっていませんか。
5: 「できる限り居住地の小・中学校に交流したり、転籍できるよう、地域の情報を提供しつつ相談・支援を継続できる体制作り」は、まったく手がつけられていないのではないでしょうか。
春日部市障害者計画に沿って市教委の方針を見直すべきです。文科省の旧態依然とした省令にとらわれず、「分け隔てなくともに学ぶ」ことを基本とした相談・支援に転換してほしいと思います。
以下は2003 年12月に市教委にも示した案を、若干修正したものです。
2005 年2 月14 日
市教委として、この提案を受け止め、来年度に向け改革プランを立てて下さい。
春日部市教育長 様
どの子も地域の学校・高校へ・県東部地区懇談会
県の彩の国障害者プラン21では、障害のある人とない人が「同等」になることをめざすこれまでの基本理念を改めて、「分け隔てられることなく」という理念をはっきりさせ、それに基づいて教育の分野においても「共に育ち、共に学ぶ」ノーマライゼーションの方向が確認されました。
これに先立ち、昨年からスタートした春日部市障害者計画においても、「ともに学ぶ教育の推進」として「障害のある子どもと障害のある子どもが、分け隔てなくともに学び育つことができるように、多様な支援方法を検討して障害のある子どもの学校生活をサポートする。」とあり、さらに「養護学校に通う児童・生徒が地域社会の中で、その一員として豊かに生きることがでるよう、自分の住んでいる地域の児童・生徒と居住地の学校とが交流し、ともに学んだり活動をしたりするなどの交流のあり方を研究する。」とされています。
県においては、「ノーマライゼーションの理念に基づく教育をどのように進めるかについて」と題する県特別支援教育振興協議会の検討結果報告が出されました。そこでは障害の種別・程度により教育の場を分けてきたこれまでの就学指導の見直しを踏まえ、「就学指導委員会から就学支援委員会へ」という提案もなされ、県レベルでは規則を改正し、「就学指導」を「(就学に係る教育的)支援」に改めることになりました。
今日、地方分権の時代にあって、就学指導は基本的には市町村の自治事務であり、国・県の動きを見据えて市町村がいかにこれを見直すのか、その見識が問われています。
御市がこのことに取り組むにあたり、これまで20年以上にわたって「ともに学ぶ教育の推進」をテーマとして活動してきた立場から、以下の提案をさせていただきます。
提案
1.従来の一律の就学判定を廃止し、「共に育ち・共に学ぶ」ことを基本にこれまで「就学指導」において、学校教育法施行令22条の3別表に基づき、障害の種類・程度に応じて、子供たちを「盲・ろう・養護学校が望ましい」とか「通常学級が望ましい」などと一律に判定してきましたが、これをただちに廃止すべきと考えます。
その根拠は、これを学校の外の社会に置き換えてみれば、一目瞭然です。たとえば、まず判定ありきとして、一律に「入所施設が望ましい」人や「地域生活が望ましい」人を分ける判定など、存在しようもありません。
福祉の分野においても障害の種類・程度に応じて利用可能な制度が異なりますが、「施設に入りたい」とか「ヘルパーの派遣を受けて生活したい」といった具体的な利用申請が出された後、はじめてそれを受ける資格があるかどうかの判定がなされるのです。
利用の申請が出された場合その判定が必要になることはありますが、現在の就学判定は、障害があることによって行政が一方的に生活の場をきめつける差別制度であり、次代をになう子供たちに与える影響ははかりしれないものがあります。ただちに撤廃すべきです。
そのことは、本来はすべての子供たちが地域の通常学級で共に学び、共に育つことをめざすべきであるという基本的な原則を確認することであり、ようやくにして教育におけるノーマライゼーションのスタート地点に立つということであります。2.「適正就学のための相談・指導」から「共に育ち・学ぶための相談・支援」へ
これによって、これまでの「適正就学のための相談・指導」から「共に育ち・学ぶための相談・支援」へ、ようやく転換できることになります。
これまでは22条の3に基づく「適正な就学の場」の判定を前提として、「本人・保護者の意志」を「適正」な方向へ「自己指導」(誘導)してゆくことが「相談」であるという枠組みになっていました。
今後は、「共に育ち・学ぶ」ことを基本として、現状では支援のほとんどない通常学級に行くことに対するとうぜんな不安や悩みとつきあってゆくことが相談の主要な中身になります。
また「共に育ち・学ぶための支援」については、これから徐々に創り出してゆかねばなりませんが、これまで特殊教育で行われてきた障害のある子どもに対する特別な支援よりも、できる限り他の子供たちも含めた支援をめざす必要があります。
そして、学校の中だけでなく、通学や放課後も含めた地域生活全体の中で「共に育ち・学ぶための支援」を考えてゆくことが必要です。3.特殊学級や盲ろう養護学校で学ぶことを選んだ親子への相談・支援体制を
本来はすべての子供たちが地域の通常学級で共に学び、共に育つことをめざすべきであり、自治体はそのための相談に最大限の努力を傾ける必要があります。
しかし、それでも教育環境や主体的条件が整わず、本人・保護者が通常学級で学ぶことは難しいと判断し、特殊学級や盲・ろう・養護学校で学びたいという希望がある場合、それに応えられる体制整備は現状では必要なことです。
もとより特殊学級や盲・ろう・養護学校は誰でも入れる学校ではありませんので、本人・保護者の希望により、その利用の適否の判断は自治体の責任で行う必要があり、そのための基準として22条の3別表が存在するのであれば理解はできます。
こうして、特殊学級や盲ろう養護学校で学ぶ子供たちも、本来は地域の通常学級で共に学び、共に育つ権利をもった子供たちであるという認識に立ち、希望により本来ゆくべき通常学級での学習や行事に参加することを支援し、さらに転籍を望む場合は最大限の支援ができるよう、相談と支援体制の整備を進める必要があります。4.国・県におあずけにせず、市の就学指導委員会条例・規則の改定から
文科省は、中教審の特別委員会から出される予定の最終報告を受け、これまでの特殊教育を見直し、通常学級内のADHD、LD などと呼ばれる子ども達をもその対象に加えた「特別支援教育」への転換を図るべく、盲ろう養護学校の特別支援学校への転換などを内容とする法改正をめざすとしています。
また、県は2003 年11月にまとめられた埼玉県特別支援教育振興協議会最終報告を踏まえ、学校(学級)の枠を柔軟にする「支援籍」制度を県単で作るべく、モデル市町村での試行を始めました。
国・県ともに、これまでの「場を分けた教育」への批判を踏まえ、社会のノーマライゼーションの波に対応しようとしていますが、決定的なあやまちは学校教育法施行令22条の3別表に基づく就学指導の基本については、現状維持でしかない点です。
国・県いずれの動きに対しても、特殊学級や盲ろう養護学校の親や教員から、子供たちがそこを追い出されるのではないかという不安が寄せられています。その不安は理解できます。もちろん、特殊学級や盲ろう養護学校が現在のような閉ざされた場であっていいはずはありません。
でもそこを共に学び・育つための支援の場にしてゆくためには、教育委員会が子供たちを障害によりふり分ける今の就学指導を改めなくてはなりません。
そこを変えないままで「場を分けた教育」を柔軟にしようとしても、ADHD、LD などと呼ばれる子ども達も含め、より効率的に細かく子供たちを分けることにしかならないのははっきりしています。
地域から排除され身を寄せた避難所で、さらにふりわけられ、たらいまわしにされるのかと、特殊学級や盲ろう養護学校の親子が不安を持つのは当然なのです。
そして、国・県がこの学校教育法施行令22条の3別表による就学指導に固執している理由の一つは、もしこれをなくしたら障害児の多くが通常学級に流れ、特殊学級や盲ろう養護学校の教育は成り立たなくなり、市町村からは通常学級の障害児への支援要請が殺到し、収拾がつかない状況になるのではないかという不安です。
しかし、実際には、いま国が「脱施設」や「社会的入院の解消」を方針化していますが、現場では遅々とした流れしか生まれていないことでもわかるように、いったん分けられた世界が一緒になってゆくにはきわめて長い時間がかかるはずです。
国・県の不安は、現実的ではありません。国・県の動きをただ待っていても、「共に育ち・学ぶ」社会はきりひらかれません。そして、「共に育ち・学ぶ」ことがなければ、「共に働く」ことも「共に暮らす」ことも地域社会に根付ききれないでしょう。
就学指導は市町村の自治事務です。特殊学級や盲ろう養護学校の体制を変えることはできませんが、おしきせの就学指導のありかたを本来あるべき姿に直すことなら、市町村の判断でできるのです。
そして、志のある市町村が行動することが、県や国の施策に影響を与え、学校制度をゆるやかに変えてゆく原動力にもなるのだと確信します。
すでに、宮城県では「原則通常学級、例外特殊学級・盲聾養護学校」の方針を固めました。また本県でも東松山市では市長自らが、就学指導委員会を廃止し、就学相談委員会を立ち上げることを提案しています。
私たちはこの方向を支持するとともに、本市においても学校教育法施行令22条の3別表に基づく一律の就学判定を改め、共に学び、共に育つための相談・支援体制を、本人・保護者の参加の下に確立することをめざすよう提案したいと思います。