さまざまな障害のある人とない人が地域であたりまえに暮らしてゆくための街づくり、就労、教育、住宅、介助、医療などにわたる課題を、県の関連する諸部局と一緒に考える「総合県交渉」(主催・埼玉障害者市民ネットワーク)が、8月30、31日に県庁で行われます。例年県内各地から、200 人が参加。下記は教育部分の要望書です。教育は30日午後2時20分からになりそうです。あなたもどうぞご参加を。要望書の全文をお読みになりたい方は、048-737-1489 まで。 |
V ともに学ぶ教育1) 特別支援教育について
@ ノーマライゼーション教育は義務教育課で
彩の国障害者プランに基づき埼玉県は教育のノーマライゼーションを進めるため、特別支援教育課内にノーマライゼーション教育担当を配置していますが、特別支援教育課が管轄し予算を握っているのは盲・聾・養護学校についてのみです。ノーマライゼーション教育は「分け隔てられることなく共に育ち・学ぶ教育」であり、本来義務教育課ないしは市町村教育課に配置されるべきものと考えますがいかがでしょうか。
A 共に育つための市町村レベルの支援体制の検討を
文部科学省は、既存の盲・聾・養護学校を特別支援学校(仮称)として、地域の小・中学校の支援センター的機能を持たせる構想を打ち出しています。しかし、盲・聾・養護学校には「特殊教育」についての情報はあっても、共に育ち学ぶための支援ノウハウはまったく欠落しています。障害をもちながら、どうやったら他の子どもたちと一緒に勉強できるのか、子どもたちの関係を損なわない介助のあり方はどうあるべきか、運動会や遠足などの行事への参加はどうしたらよいのか、既成の制度活用はもちろんのこと、制度の枠をはみ出す現場での様々なとりくみを蓄積・研究し、市民や障害者団体、関係機関などとのネットワーク、情報収集、研修の企画などを通して、親子や教員などの相談にのり、応援していける体制を市町村レベルで構築してゆくことが必要と考えます。県として市町村への支援施策を考えてください。
B 早期発見・早期教育(療育)で求めるものは?
保育園、幼稚園の入園について、どこに相談したらいいのか、入れないのではないか、といった不安を持った若い親がたくさんいます。また、入園希望を伝えたら、障害児通園施設に行くべきとか、手がかかる子は受け入れられないとか、親の付き添いができないなら無理とか、障害のある子がいると他の子のことを面倒見てもらえないという親たちの意見があると言われた、といった例が跡を絶ちません。早期発見・早期教育(療育)の名により、幼いころから特別なレールが敷かれ、近所の子供たちや家庭生活から分けられ、迷わされるのは本末転倒です。障害の重い子も含め、保育園幼稚園などで、当たり前に共に育ちあうための支援を考えてください。
C 学習権の侵害について
小中学校の普通学級において、校外学習や宿泊学習の度に保護者の付き添いを求められ、家庭の事情で付き添いができず休むことになったり、介助員の付かない日はプールに入れないと言われたり、介助員がついているにもかかわらず、みんなが走るマラソンコースと違うコースにされたりといったことが起こっています。このような事態は、障害のない子の場合、学習権を侵したとして大問題になりますが、障害のある子供の場合、あってもいいのでしょうか。
D 県の目指すノーマライゼーションとは
母親が付き添いをさせられているが、子どもが大きくなりプールの介助が大変であるにもかかわらず、教員は一切手伝ってくれないといったような例がよくあります。「本来養護学校に行くべき生徒」「ここにいるべきでない子ども」「経過観察中の子」と位置付けられた結果といえます。県がめざす「ノーマライゼーションの理念」から見て、どう評価されますか。また、このような事態についてどう対処されるのでしょうか。
E みんなと一緒に育ち学ぶことが大切であるといわれながら、その一方で小中学校の普通学級に在籍する子どもたちの就学後も分けられた場に移ることを繰り返し強いられたり、親の付き添いを強制されたりしていますが、昨年の交渉で県は「保護者と教委、学校が独自に約束事としていることについては、県教委の指導になじまない」とした上で、付き添い教養といったことがあれば「県として調査する」と答えました。このような実態は枚挙にいとまがありません。ぜひ調査しその結果を明らかにしてください。
F 特別支援教育コーディネーターの資格取得の講座や研修
特別支援教育振興協議会の出した方向に沿って、支援籍の試行などの取り組みが進んでいるところですが、現実に普通学級で学んでいるすべての障害のある子どもの実態を把握しないままで、「ノーマライゼーションの実現につながる」などありえません。特別支援教育コーディネーターの資格取得の講座や研修において、このことをどう説明されているのですか。
G 中学校卒業後の進路選択
中学校卒業後の進路選択で、養護学校や特殊学級においても、選択肢として高校もきちんと項目に入れ必要な説明を行ってください。その上で、養護学校や特殊学級を含む全ての中学3年生の高校進学希望数から定員を決めるようにしてください。
H 障害のある生徒たちの県立高校受験に関し、中学校段階で情報が不足していたり、誤った情報に基づいた指導が行われている実情があります。教育局としてきちんと指導を行ってください。
I 高等養護学校や高等学校内の養護学校高等部分校設置について
軽度の知的障害児を全県から集めて就職率100%をめざすという高等養護学校、そして自力で通える知的障害児を集めるという県立高校内の養護学校分校設置は、障害者自立支援法と同じ差別・分断の道でしかありません。県立高校を希望する生徒達に対し、定員内不合格など排除の姿勢を変えず、養護学校高等部に誘導してきた結果として、「知的障害養護学校の教室不足」がもたらされたことを認め、全面的に見直してください。
このほかにも、教育に関連した要望が次のように入っています。T 理念と権利
2) 擁護について
@ 発達障害者支援法が施行されましたが、この法律の成立過程での当事者の不在が、あちこちから指摘されています。昨夏、県教委が県内の小中学校で一斉に行った「特別な教育的支援を必要とする生徒」の調査結果でも「10.5%」という数字が一人歩きしており、今後「早期発見・早期支援」の名による掘り起こし、ラベリングの横行が危ぶまれます。県として、こうした権利侵害の危険にどう対処されるのか、明らかにしてください。
A 教育の欠格条項について
一昨年、特別支援教育推進協議会で議論された「全障害児の普通学級籍実現」は、分離教育を原則とした国の学校教育法施行令に阻まれ、『支援籍』などという、中途半端でわけのわからないものと化してしまいました。「就学指導委員会」は「就学支援委員会」と名称を変えつつありますが、学校教育法施行令22 条の3 別表に示される就学基準に基づく判定(判断)機関であることに変わりはありません。私たちは、これは障害児に対する教育についての「欠格条項」だと考えます。彩の国障害者プランに示された「障害を理由に分け隔てられることのない教育」との矛盾をどう説明されるのでしょうか。
Y 住宅・まちづくり
B 県立高校校舎のバリアフリー化の進捗状況を教えていただきたい
ある電動車イス使用の障害者夫婦の息子さんが通学している県立高校へPTAなどで同校を訪れる機会が多いが、校舎はまったくバリアフリー化されていないと訴えています。足の不自由な生徒も在籍しているので、校長がスロープや車椅子トイレの設置を計画しているが、県教育委員会が予算をつけない為、実現しないと言う。実情はどうなのか?県内の高校のエレベーターの設置状況も併せて説明していただきたい
C 学校施設バリアフリー化推進指針は一緒に学びあうことを前提としていないことを確認してください
昨年の交渉で、私たちの要望に応えて、県社会福祉課は、「ご指摘の文部科学省の指針については、私どもとしては障害のある子とない子我一緒に学びあう場として位置づけられていると考えている。埼玉県の条例でも同様」と答えられました。しかし、指針をどう読み込んでも、「分けた上での交流」はともかくとして、一緒に学びあう場として位置づけている表現はありません。県としての評価を正しく行なった上で、国への意見や県条例の見直しを検討してください
県庁へ行ったことのない方もおられるのではありませんか。夏休みの終わりに、お子様連れでいかがですか。JR 浦和駅西口から電車を背にしてまっすぐ15分歩くと県庁です。その一角にあるのが第3庁舎。その4階に講堂はあります。総合県交渉は両日とも10時半開始で4時終了。朝から参加の方で、春日部・越谷方面の方は、わらじの会で車も出しますので、便乗したい方はご連絡を。