@差別的な就学指導の在り方を見直してください。 A通常学級在籍の障害のある児童・生徒が共に育ち・学ぶための教育環境整備をしてください。 B原則分離教育を盛り込んだ学校教育法施行令等の改正を、国へ働きかけてください。 共に学び育つことをぬきにしては、共に働き・共に暮らす社会はできません。そのために、県議会へのはたらきかけを準備中です。多くの人が参加できる形を工夫して一緒に取り組みましょう。 |
1.件名障害を理由に教育の場を分け隔てるための就学指導(判定)をやめ、共に育ち・学ぶ教育環境整備を求める陳情
2.陳情の趣旨
@差別的な就学指導の在り方を見直してください
A通常学級在籍の障害のある児童・生徒が共に育ち・学ぶための教育環境整備をしてください
B原則分離教育を盛り込んだ学校教育法施行令等の改正を、国へ働きかけてください「分け隔てられることなく共に育ち・学ぶ教育」を盛り込んだ「彩の国障害者プラン21」の基本理念に基づき、障害を理由に教育の場を分け隔てる差別的な就学指導のあり方を見直し、通常学級に在籍している身体や知的の障害のある児童・生徒が共に育ち・学ぶための、実態及び課題の把握と、教育環境整備に正面から取り組んでいただきたく陳情します。また県としてそのような施策がとりにくいのは学校教育法施行令等の「原則分離」という国の教育制度に大きな原因があると思われるので、国への働きかけもあわせてお願いいたします。
3.理由
(@)彩の国障害者プラン21では
彩の国障害者プラン21では、ノーマライゼーションの理念を「障害のある人々が社会を構成する一員として障害のない人と分け隔てられることなく、ともに生活し、活動する社会を目指す」と規定し、「ノーマライゼーションの理念の実現には、障害のあるなしに関らず、子どもの頃から共に育ち・共に学ぶことが大切」と謳っています。(A)学校教育法施行令と通常学級に在籍する障害のある児童・生徒
しかし文部科学省の通知に基づき、埼玉県教育委員会は各市町村教育委員会に対し、就学指導(支援)委員会の設置を求め、障害の種別程度により盲・聾・養護学校や特殊学級に教育の場を分け隔てるための差別的な就学指導が実施されています。そして就学指導(支援)委員会でいったん「盲・聾・養護学校に就学させるべき子」と判定されると、そのレッテルは卒業するまでついてまわります。
学校現場では「本来通常学級に居るべきではない子」として扱われ、常時の保護者の付き添い強要やプールへの参加拒否、遠足における保護者の付き添い、他の児童から離れての別ルート参加や盲・聾・養護学校、特殊学級への転校の強要などの人権侵害が当たり前のように行われています。
県教育局の平成15年度の調査によると、市町村就学指導(支援)委員会で「盲・聾・養護学校や特殊学級に就学すべき」と言われながら通常学級に在籍している児童・生徒は1111人おり、この他にも就学指導委員会での判定を拒否して通常学級に入っている子ども達が相当数いるものと思われます。これらの児童・生徒が共に育ち・学ぶための環境整備こそが、本来、教育のノーマライゼーションの最大の課題であるはずです。しかし教育のノーマライゼーションを進めるために設置された埼玉県特別支援教育振興協議会では、多くの委員からそれらの問題が指摘されつつも、一切取り上げられることはありませんでした。
学校教育法施行令第22条の3の表に基づく「盲・聾・養護学校に就学させるべき」者は、盲・聾・養護学校に就学しているか、認定就学者(市町村の責任で、学校現場にバリアフリーの設備や専門教員が配置されている場合に限り、例外的に小・中学校で就学することを認める)として特殊学級ないしは通常学級に就学しているかどちらかである、というのが文部科学省の理解です。埼玉県は認定就学者は0名と報告されていますので、上記1111人+αの子ども達は文部科学省からは「居るはずのない子ども」ということになります。まさにそのことが、財源の問題も含め、充分な支援体制がとれない原因となっています。(B)国際的な動向
現在、国際社会における「障害者」に対する考えは、それまで「障害者」自身が「障害」の克服・軽減に努め社会に参加していくという考えから、「障害者」をありのままに受け入れ、また受け入れられるように社会が変わらなければならないとする「インクルージョン」(全ての人を包み込む)という考えに変わっています。それは教育の分野では、「インクルーシブな教育」(全ての人を包み込む教育)として欧米だけではなく、韓国などのアジアの国々でも、障害を持っている人も持っていない人も一緒に学ぶ教育として実践されてきています。それに対しわが国は、国連子どもの権利委員会から「子どもの権利条約」を踏まえ、二度にわたって「分離教育の改善」へ向けた勧告を受けており、更に今後採択されるであろう国連障害者の権利条約においても、「障害を理由に教育の場を分け隔てている」これらの差別規定は確実に問題視されていくと言われています。(C)少子高齢化社会への対応
盲・聾・養護学校等に通う子どもに対しては年間一人当たり約1千万円、12年間で約1億円以上もの費用をかけています。しかし、「障害者」の社会参加は一向に進まず、施設入所者率は、諸外国が1970年から減少しているのに日本だけが増加している有様です。「障害者」を分けて教育を行った結果、「障害者」は専門家にという意識が徹底され、誰もが気軽に介助や介護ができない、また専門家によるため非常に費用のかかる環境を作ってしまいました。
多くの諸外国が共に学ぶ教育施策を採ったことの理由の一つに、「障害者」に対し誰もが気軽に手を出せる環境を作り、高齢化社会へ向け施設入所者を減らしていくことで費用を抑えていく、という側面があります。世界に類のないほど急速に進むわが国の少子高齢化社会を考えるとき、特殊教育や施設など一部の専門職によって福祉を支えていくという観点では、財政的な破綻は目に見えています。(D)分け隔てられることのない教育の実現を埼玉から
もともとは国の学校教育法施行令等(原則分離・例外統合)に大きな問題がありますが、埼玉県は全国に先駆け、いち早く教育のノーマライゼーションを打ち出し、また埼玉の障害者プランの「分け隔てられることなく、共に育ち・学ぶ教育」が国の障害者基本法にも影響を与え、参議院附帯決議として「障害を理由に分け隔てることは差別」という趣旨が盛り込まれた経緯があります。時代の流れを見定め、一つは人権やノーマライゼーションの観点から、もう一つは迫り来る少子高齢化社会へ向けての観点から、分け隔てられることのない共に育ち・学ぶ教育の実現を、埼玉県が率先して方向を示していただけますようよろしくお願い申し上げます。