明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします

 写真は、このTOKO を作っている谷中耳鼻科の黄色い部屋の年越し風景。まさに3匹の猫達によって、活動は辛くも維持されています(イラストは合成)。
 さてご存知の方もおられると思いますが、文科省は中教審特別支援教育特別委員会の答申を受け、新年の通常国会学校教育法などの改正案を出す予定です。
 「学習障害(LD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもも、通常学級に在籍しながら必要に応じて別の場で指導が受けられる通級の対象とするというのが大きな狙いで、それをバックアップするために、これまでの盲・聾・養護学校を複数の障害に対応できる特別支援学校にするなど、いまの特殊学級や通級指導教室を含めた特殊教育のシステム全体を再編成してゆくための法改正です。これに関して、、次のページと11 ページをご覧下さい。

 この改正案では、障害児は別の場で教育を受けるべきと定めている学校教育施行令の就学基準はそのまま残されます。教育の欠格条項をなくす会準備会では「別の場が基本・通常の場は例外」という基準を、「通常の場が基本・別の場は例外」と改めさせようと国会議員や文科省にはたらきかけています。これに呼応して、12月、埼玉県議会に手をつなぐ育成会、自立生活協会、みんな一緒に普通学級へ埼玉連絡会の3団体が「陳情書」を提出しました。3ページにあります。

 「あんな重い子どもが通常学級に入ってもお客様になるか、いじめの標的にされるだけ」とよく言われます。しかし「重い」というのは大人の感覚であり、一緒にいる子供たちの間の感覚は別です。交流に来た養護学校の子には「障害の理解」に基づきやさしくしても、同じクラスの障害のある子には一員としての役割を果たすことを求め、子どもたちの論理でのぶつかりあいも起こります。大人からは「いじめられてかわいそう」と見えるのに、本人は学校が楽しいと言い張るのも子どもの論理からです。そんな子供たちもひどくめげることがあります。学校へ行けなくなることもあります。親はそんな子どもを見ていられません。お客様のままではかわいそうと思います。学校に縛られなくてもいいんだよと言ってあげたくなります。ここで、障害のない子の場合は、子も親も「学校制度」に見切りをつけねばなりません。障害のある子の場合は、「あなたたちのために用意しました」という学校(学級)があります。でもみんな迷い、悩んでいます。……子供たちとともに生きる親たちの迷い・悩みを、TOKOに寄せてもらい、その一部について、11月の越谷おしゃべり会で話し合いました。4ページからです。みんな一緒に普通学級へ・埼玉連絡会代表世話人の加瀬さんの「いま学校で」(10 ページ)もあわせて。

 今年も県立高校の入試が近づいています。どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会の県教育局との交渉については9ページをお読み下さい。

 くれぐれも誤解しないほうがいいと思います。この法改正はこれまで別の場で学びなさいと分けられて来た障害のある子ども達のためのものではありません。そして、基本的にはこれまで「親のしつけが悪い」とか「努力が足りない」などと不当な非難を受け、追いつめられてきたLDやADHD、高機能自閉症などといわれてきた子どもたちの復権のために行われるのでもないのです。

 では何のためでしょうか。障害のある子ども達のことだけを考えていたのではわかりません。1979年の養護学校義務化により、通常学級は(能力・適性のない)障害児を除く全ての子が行かなくてはいけない場に初めてなったのです。ついに受験競争と管理教育を抑えていたタガがはずれました。80年代は「個性化」・「自由化」の名による競争と選別の教育が進み、子ども達の絶望は「校内暴力」に点火。それが鎮圧される中で、「登校拒否」や「いじめ」が90年代を通じて広がっていきました。文部省や教委は、いつも「問題は子供の中にある」ときめつけ、「ゆとり教育」などによって子ども達の心をコントロールし自覚を促そうとしました。やわらかな「相互監視装置」にさせられてゆくクラスの中で、子ども達は、いわゆる「学級崩壊」や優等生と見なされていた子に同級生が殺されるといった事件などの形をとって逆らうしかありませんでした。こうした中で、「心の問題への対応」が叫ばれたり、2001年には学校教育法の一部改正により、問題行動を起こす生徒に対する出席停止制度が整えられたり、地域、関係機関との行動連携が強化されたり、指導力不足教員の摘発などが行われてきたのです。そして、LDやADHD、高機能自閉症の問題は、基本的にはこのような学級運営や生徒指導の一環として、指導を怠ると重大な問題行動を起こしかねない子ども(例・長崎男児誘拐殺人事件の家裁決定)としてクローズアップされてきたのです。

 最大のねらいは通常学級の中に「約68万人」(上図)潜んでいるはず?の「問題児予備軍」のチェックです。「早期発見」により周囲の理解が進むと期待したい気持ちはわかります。でも、子供たちはほんとうに特別視され分けられることを望んでいるでしょうか。大事なことは、通常学級を「いろんな子が一緒にいる場・いていい場」と認知させること。通常学級にはいないことにされている障害のある子ども達の存在をきちんと確認させることは、その第一歩。声をあげましょう。