2009年12月4日

埼玉県教育委員長 松居 和  様
埼玉県教育長   島村 和男 様

県立高等学校の後期再編整備計画(案)に対する意見

どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会
代表・斉藤尚子
埼玉障害者市民ネットワーク
代表・野島久美子


 日頃より埼玉の教育のためにご尽力いただきありがとうございます。
 私たち「どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会」、「埼玉障害者市民ネットワーク」は、障害のある人もない人も共に生きることをめざし、そのためには小学校、中学校、さらに高校においても障害のある生徒もない生徒も一緒に学ぶことがたいせつであるとして、1987年秋から埼玉県教育局との話し合いを積み重ねてきました。その話し合いにおいて、どのような障害があっても、またどんなに重い障害があっても高校で受け入れられるよう要望し続けてきました。徐々にではあれ高校への受け入れが進んできているところですが、未だに障害の重い生徒の受入れについて理解が得られない状況があります。
 私たちは、障害のある子(人)に限らず、高校教育を受けたい子(人)、必要とする子(人)は「どの子も」(だれでも)公立高校で受けとめていくべきであるという考えに立って、運動を続けてきました。子どもたちはだれでも将来の社会の担い手です。入試の得点が低かったとしても、学力が足りないとして選抜で落とすのではなく、学力のある子ども以上に教育を受ける機会を与えられるべきであり、公立高校がその受け皿の役割を果たすべきであると考えるからです。

 この度発表された「県立高等学校の後期再編整備計画」に基づく高校の統廃合は、公立高校が果たすべき役割を放棄し、高校への門戸を狭くして子どもたちを切り捨てていくものです。埼玉における高校教育の行く末が案じられてなりません。地元の高校がなくなったり、自分たちが卒業した高校がなくなったりすることは、単にさびしいといった思いにとどまらず、将来を担う若者たちに教育がきちんと保障されないことを意味しています。進学がむずかしかったり、中途退学するような生徒は最初から高校に入れない方がいいといった考え方があるようですが、学習面で遅れているとか、生徒指導上の問題があるとかいった、そのような生徒こそ最も教育されていかなければならないのではないでしょうか。現在さまざまな犯罪や社会問題が起こっていますが、それらがさらに増長していくのではないでしょうか。

 先日新聞報道されましたが、昨今の経済状況の中で家庭経済も切迫して、公立高校ならなんとか行けるという生徒も少なくありません。家庭経済がきびしいと私立高校の学費を払うのはむずかしく、全体の生徒数が減ってきていても、公立高校を受験する生徒はふえていると言われています。高い交通費を払って遠くの高校へ通うのではなく、地元や近くの高校へ通えることが家庭経済を助けることにもなります。また、家庭経済がきびしいと、働きながら定時制に通う生徒も増えるはずです。職場に近い所に高校があることで、働くことと学ぶことの両立ができます。統廃合により、単に高校の数が減るだけでなく、職場と高校が離れてしまうこともあります。家庭経済のきびしい生徒はこのように学ぶ機会も奪われ、安い労働力として働かされ、ますます経済格差も大きくなっていくことになります。

 また、私たちは、障害のある生徒も高校で学べるように、はたらきかけてきましたが、現在の選抜制度は「障害があることにより不利益な取り扱いをすることのないよう」と言いながら、得点で選抜することにより、知的な障害や重い障害のある生徒にとっては不利益となっています。統廃合により、高校の門戸が狭くなると、ますますその不利益性が増すことになります。これまで少なくとも定員内では受け入れるよう訴えてきましたが、定員割れする高校もほとんどなくなる状況です。高校の統廃合により、障害のある生徒を排除することになります。

 国や県の財政がきびしいからと言って将来の社会を担う若者の教育の機会を保障することを怠っては、ますます社会は逼迫したものになっていきます。今こそ、希望するどの子も受けとめる姿勢を示すべき時であると考えます。今回の高校の統廃合について再検討していただきますよう、どうぞどうぞよろしくお願いいたします。