地域で共に! 総合県交渉2010 要望書の教育分野

 9月1日(水)、2日(木)に埼玉会館(浦和駅西口徒歩10分)で開かれる総合県交渉の要望書のうち、教育分野をご紹介します。なお、この分野の回答を行う関係課は、教育局:義務教育課、市町村教育課、高校教育指導課、県立学校人事課、特別支援教育課、それに福祉部障害者社会参加推進課、産業労働部就業支援課になる予定です。

 小・中・高と普通に学んだ後、企業で働く本人が「分けるな」と語った(昨年の総合県交渉から)

特別な場が適切な障害児とは
1.普通学級入学を希望し、支援員配置のための補助金を申請するつもりで就学相談に行ったら、希望を聞かれることもなく、「支援学級はよいところなので見学にいかれては」と勧められました。普通学級を望む親子に、わざわざ特別支援学級・学校を勧める根拠は何ですか。障害児の「適切な教育の場」として、特別な教育の場を勧めるのが「ていねいな就学支援」なのか。であるならば、何が「適切」なのか、県がしっかりと明示すべきです。もしくは、どのような障害児が特別支援教育を受けるのに「適切」だとお考えになりますか?

本人・保護者の意志尊重の再確認
2.本県では養護学校義務化が実施された当時から、就学先の決定に際しては「本人・保護者の意志を尊重する」ことが、くりかえし確認されてきました。学校教育法施行令第18 条では、専門的な知識を有する者の意見とともの「保護者からの意見聴取」が義務付けられていますが、「尊重」については書かれていません。県として、「本人・保護者の意志を尊重する」ことを再確認してください。

支援員配置の目的とは
3.支援員がつくことになり、入学したはよいものの、今度は週5日登校なのに、支援員が週4日しか認められず、担任の負担が大きくなったようです。しかも、支援員は校外学習にはつけられず、しかたなく親がついても費用は実費になり、経済的負担が大きくなってしまいます。支援員は支援員で、臨時職員扱いのため、職員会議から外されてしまったり、同じ支援員が継続的に雇用される訳でもなく、孤立しがちになってしまいます。特別支援教育コーディネーターという人が存在しているらしいが、その制度を担任も知らなかったり、本人・親もよく分かっていなかったりします。どのように機能しているのか、見えません。こうした課題を市と交渉しても、予算や校長判断などを理由に、聞き入れられることもありません。支援員は、何のために配置されるのでしょうか。支援員が必要とされながらも、支援員が必要に応じてサポートに入れず、授業への参加が難しくなるのでは、本末転倒です。

10万人の共に学び育つ関係をベースに
4.そもそも「支援員ありき」ではなく、まず学校としてどのように地域の障害児を受け止めていくのかが基本であり、それは障害のない子どもたちが障害のあるクラスメートと共に学び、共に育つことをどう進めるかということではないでしょうか。昨年の県の回答によれば、就学指導において、特別な場が適切とされながらそれを拒否して通常学級に就学した数と通常学級が適切とされそこに就学した数の合計が、ほぼ県内の通常学級に在籍する障害のある子どもの数と推定されるということなので、今年度は2700人余りの障害のある子どもたちが共に学んでいることになります。クラスメートを合わせれば、10万人近くの子どもたちが、日々共に育っていることになります。この10万人近くの子どもたちの関係を支援するとともに、そこでのいじめやお客様扱いや排除によって別の場に行かざるを得なかった子どもたち(旗振り当番などからはずされることにより他の親子から切り離されてしまう親たちも含めて)が、クラスメートとして戻って来れるような関係を探ってゆくことが、ノーマライゼーションの理念に基づく教育の基本に据えられるべきではないでしょうか。

支援籍の評価と展望は
5.支援籍の実態は、登校時や朝マラソンだけでも出席とみなされます。場合によっては、地域の普通学校へ登校したものの、校門をくぐることもなく、そのまま特別支援学校に戻ることさえあります。しかも、こうした取り組みが年2回程度であり、保護者と支援校の担任が同伴し、満足に子供同士の交流をすることもありません。
 これが「全国で初めて」と胸を張った支援籍の実態でしょうか?
 特振協は最終報告第2章において支援籍を「心のバリアフリー化」を育む教育の推進や社会で自立できる自信と力を育む教育の充実のため」と位置づけました。今現在、県はどのように支援籍を評価し、どのような展望をもっているのでしょうか?

高校で共に学んでいる事実の周知・共有を
6.「高校は義務教育ではないから、知的な障害や身辺介助が必要な障害のある生徒は、特別支援学校高等部しか進む道はない」…残念ながら、まだまだこれが中学校の進路指導の常識になっています。実際には、そうした生徒たちが高校で共に学び、卒業していること、そのための受験上の配慮や選抜上の配慮などの制度もあることを、中学校段階で徹底して情報提供してください。また逆に、義務教育サイドからは、全県10万人の共に学び・育つ実践から得られるノウハウを、高校サイドに伝えられるようなしくみを、しっかり作ってください。

無償化に合わせ高校希望者全員入学を
7.義務教育段階の、障害のある生徒と他の生徒が一緒に学び・育っている関係を、地域の県立高校が受け継ぎ、希望する生徒は基本的にその地域の高校で受け止めてゆくという課題に向け、県立高校を見直してください。高校無償化のいま、緊急に問われています。そのために解決すべき課題を、明らかにしてください。

障害による進路ふりわけ進める特別支援学校
8.日ごろ、障害児学童クラブを利用している特別支援学校の生徒が、高等部卒業後、その学童クラブを運営している団体の、障害福祉サービス事業所を利用したい、と家族が希望しました。
 しかし、今年度に就任したばかりの進路主事は、「生徒の障害が重度のため、この団体の事業所では、適している作業がないから無理である」と判断をしました。事業所側では、各利用者に適した作業を用意しています。「何が出来る・出来ない」のかを、学校側が単純に障害の重さで判断する事ではありません。
 「出来ない」から「無理」と頭ごなしに決めるのではなく、生徒や家族の希望を尊重し、「何が出来るか」、そのためにはどうしたら良いか、を一緒に考えられる進路指導担当教諭を養成する研修を義務化して下さい。

「一般就労100%」の決算は
9.羽生ふじ高等学園とさいたま桜高等学園の3年間の実績と評価について質問します。
@今年3月に第1期の卒業生を送り出しましたが、「一般就労100%」を目標に開校された2校のそれぞれの一般就労率と一般就労ができなかった生徒の進路先を教えて下さい。
A一般就労ができた生徒のうち、特別支援学校の中学部から進学した生徒の就職率を教えて下さい。
Bこの2校が開校されて3年が経過した現在、教育、労働、福祉の各分野からこの2校に対する評価を聞かせて下さい。


総合県交渉とは: 障害者団体の交渉というと、ふつうは障害別の利害や負担金の軽減や予算増といった要望に終始するのが常です。埼玉障害者市民ネットワークに集まっている県内各地の団体は、わらじの会のように障害の有無や種別を超えて共に生きる街をつくろうという団体が多いこと、「障害者のため」に何かするというより「障害を持つ本人が他の人々と共に生きる」活動をしている団体が多いことなどから、せまい意味の障害者施策だけでなく、障害のない人々の働き方、学び方、暮らし方に関する要望をもって、県庁のたくさんの部局と意見交換をします。都道府県レベルでこのようなトータルな交渉を行っている事例は、全国的にも数ケ所のみです。
(連絡先:埼玉障害者市民ネットワーク(野島久美子代表) 事務局・大坂 090-4938-8689)


勉強会のおしらせ

「自立支援協議会と私たち」
お話・星野晴夫さん(文教大教員)
9月4日(土)10:00〜12:00
越谷市中央市民会館5階会議室
会費200円 手話通訳・要約筆記有
連絡先:107の会・090-2202-5271(中山)

「就労支援―草分け時代から現在まで」
お話・鈴木良子さん(都立心身障害者福祉センタ ー)
9月24日(金)18:30〜21:00
越谷市中央市民会館5階会議室
会費200円 手話通訳有