県立高校を 希望するすべての生徒にひらいて下さい

8月5日に要望書を提出してきました

2010年8月5日

埼玉県教育委員会教育長様
埼玉県教育委員会教育委員長様

どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会
代表・斉藤尚子
埼玉障害者市民ネットワーク
代表・野島久美子

要望書

 障害のある生徒の高校への受け入れについて、日頃よりご尽力いただきありがとうございます。
 4月30日に今年度第1回目の県交渉が持たれました。これまで毎年毎年担当者が替わり、1987年以来の話し合いで積み重ねられてきたことがきちんと引き継がれていなかった経緯があったため、今年度第1回目の交渉においても、その引き継ぎがなされているかの確認を行いました。それに対し「引き継ぎを受けております。」との回答でしたが、話し合いを進める中で、文書上の引き継ぎに終わり、その意味がきちんと理解されていないことが露わになりました。障害のある生徒の高校入学をめぐる状況は、高校の統廃合や入試制度の改変によりますますきびしくなっているにもかかわらず、そのような引き継ぎ状況で果たして事態を進めていけるのか、不安を抱かざるをえません。引き続き、これまでの経過の把握に努めると共に、高校への受け入れを進めていくために今何が課題かをきちんと認識して取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 経済状況の逼迫等により、公立高校への希望者が増加傾向にあり、その希望を受けとめて公的に教育を保障していくことが今ほど必要な時はありません。高校の授業料無償化の政策も進められていますが、現在の選抜制度の下では、障害のある生徒や点数が取れない生徒など公立高校への入学がこれまで以上に困難になり、高校無償化の対象外にされるという、たいへん差別的な扱いを受けています。高校への門戸を広げるための抜本策を出していただきますよう、よろしくお願いいたします。

1、2010年度の入試における、受検者数と不合格者数を示してください(前期、後期、二次、追加募集について)。
また、2011年度の募集定員数をどのように策定するかについて示してください。

2、高校無償化は学ぶ権利を保障するためのものであるはずですが、入学できた生徒は無償化されるのに、公立高校で学びたいという強い希望を持ち、もっとも教育を必要とする生徒たちが高校に受け入れられず、無償化から除外されることは、たいへん不平等と言えます。新制高等学校は選抜を、“望ましいことではなく”設備を用意できるようにな れば“なくすべきものである”として始まっています。公立高校を希望者全入にしてください。

3、昨年度の要望を受けて、2011年度の入学願書から「学力検査等の際配慮を要する措置」の欄が設けられました。単に受検関係者に周知できるだけでは不十分であり、障害のある生徒が受検し入学していくことに対する高校現場の理解が進められていかなければなりません。「学力検査等の際配慮を要する措置についての願」を受け入れていくための選抜の資料とするなど、選抜制度の改善をしてください。

4、障害のある生徒を受けとめるために埼玉県教育局としては、どのような具体策を考えていますか。今春、2年浪人した障害のある生徒が県立高校全日制に合格した茨城県では、@解答の仕方について従来の記述式問題から選択式に変えた。A定員内不合格を出さないよう従来よりも一歩踏み込んだ通知を出した。B入学すれば加配をするという支援策を出した。という具体策を行ったと聞いています。そのような情報なども参考に、ぜひ具体策を出してください。

5、障害のある生徒の受け入れについて、高校現場の教員の理解が進むよう各高校で研修を実施してください。障害についての専門知識の研修になりがちですが、障害のある人とない人が一緒に生活したり学んだりすることの意義や具体例などを、障害者本人や家族、支援者、あるいは小中学校や高校で受け入れている教員などから聞くといった研修を行うよう指導してください。

6、高校現場に対する理解を進めるために、東京都教委が高校に受けとめるための配慮やその法令上の裏付けを示した「参考資料」を参考に、埼玉バージョンの案を作成してください。また、その案を事前に示し、一緒に検討するようにしてください。

7、7月の行われた中学校向けの入試説明会において、障害のある生徒を高校に受け入れていくことについて、どのように説明されたか、県が前向きの姿勢であることを示されたか報告してください。また、入学願書に「学力検査等の際配慮を要する措置」の欄が設けられたことについて、その経緯や意味を説明されたかどうか報告してください。

8、11月に行われる高校向けの入学説明会において、障害のある生徒を高校に受け入れていくことについて、県が前向きの姿勢であることを示す説明をしてください。
  (ア) 平成22年度の入学者選抜実施要項・要領に「障害のある受検生に対する配慮事項及び配慮が必要な場合の手続」について載せたことは、“一歩前進”と前主席も交渉の場で言っています。また、平成23年度の入学願書に「学力検査等の際配慮を要する措置」の欄が設けられました。そこに至るまでの経過と、そのことは県が障害のある生徒を高校へ受け入れていこうという姿勢であること意味していることについて説明してください。
  (イ) 障害者権利条約では「あらゆる段階におけるインクルーシブな教育制度」を盛り込み、国連子どもの権利委員会の最終所見でも「障害のある子どものインクルーシブ教育のために、必要な便益を学校に備えるとともに、障害のある子どもが希望する学校を選択し、・・・」といった項目が挙げられるなど、世界的にはインクルーシブ教育の方向へ動いていることや、国会内においても「インクルーシブ教育を推進する議員連盟」ができたり、インクルーシブ教育システム構築への動きがあることなど、国内外の状況について説明してください。

来年の受験者・松森くん(中央・車いす使用)も一緒に要望書提出に。
右は、県教育局高校教育指導課・工藤主席(8月5日・県庁)

 総合県交渉の要望書にあるように、本県では長年の交渉により、本人・保護者が地域の学校で共に学びたいとはっきり意志表示すれば、特別支援学校でも毎日通学でなく訪問指導の対象になるような重い障害でも、通常学級で受け止める実績が積み重ねられてきました。20年前からは、公立高校を、どんな障害があってもみんなと一緒に学べる場にと、運動してきました。「義務教育じゃないから」と、点数が取れなければ落とすのはとうぜんだとつっぱねてきた県教育局も、障害に対する加算など、一定の対応をするようになりました。何年間も浪人してがんばってきた知的障害児が、なんとか高校に入り、共に学び、卒業するケースも重なってきました。
 しかし、県の中には、高校をもっと分けて、エリート育成にも力を入れるべきという主張も強くあり、定時制や困難校を統廃合しつつあるため、点数の取れない生徒を受け止めてきた高校がなくなろうとしています。共に学ぶ高校づくりは、障害のある生徒だけの問題ではなくなりつつあります。
 あちこちの高校が共に学ぶ場になれば、卒業後の職場・地域も、具体的に一緒に生きてゆく場になることが問われます(下記・ちばMDエコネットの例参照)。だから、大人の障害者も、まだわが子が小学生という人も、高校を変える交渉に、ぜひ参加を。9月20日前後に、高校問題に限った交渉を行う予定です。