教育の欠格条項をなくす会について

埼玉 どろんこの会 黒古次男

 12月13日(土)全国障害者政策研究集会の夜、同じ総評会館において、「第1回準備会」が開かれ、政策研に集まったおよそ40人の障害者、支援者が集まり、このことについて論議されました。
 また、1月25日(日)には大宮ノイエにおいて「第2回準備会」が開かれた。DPIの平井さん、姜さん、全国連絡会の片岡さん、北村さん、埼玉のメンバーが参加し、基本的な会の方向や今後のことについて意見交換した。
 さらに、2月5日(木)には教育会館において、平井さんの状況に合わせて「第3回の準備会」が開かれた。

 いままでの3回の準備会において話されたことをまとめると以下のようになる。

■会の名称 「教育の欠格条項をなくす会」

■会の方向 直接的には、国が障害の種別・程度によって子どもたちの就学先を分ける規定としての「学校教育法施行令」を問題にしていくが、上位法としての「学校教育法」や「教育基本法」の問題点もあわせて追求していく

■活動の重点
・「分けることは差別」であり、国が子どもの就学先を分けることを「欠格条項」として訴えていく
・当面の課題としては、今国会に上程されると思われる「障害者基本法」の教育の部分(交流教育)の変更を求める
・さらにその先には、「教育基本法」「学校教育法」などの改悪が目論まれており、そのことも活動の視野に置く
・勉強会、集会、署名活動、ロビー活動など、できるだけ広範囲に、「欠格条項」の意味なども含めて、広く問題点を明らかにしていく

■当面の活動
*2月16日(月)実行委員会(19:30−21:00 大宮 輪っふる)
*3月1日(月)実行委員会(18;00−21:00 東京 教育会館)
*4月11日(日)「教育の欠格条項勉強会」 浦和 埼玉会館
 「分け隔てられることのない社会を目指して」 〜教育の欠格条項と地域生活〜
*5月9日(日)全国集会

 

「第一回準備会」報告

 第9回障害者政策研究全国集会が開かれた12月13日18時から、同じ総評会館の1室で「教育の欠格条項を考える会(仮称)」の準備会が開かれました。全国から政策研究集会に集まった人たちが参加し、21時近くまで熱心に情報交換、討議がされました。

教育の欠格条項=学校教育法施行令

 「欠格条項」とは、障害があるという理由で免許・資格取得の制限・禁止を定めている法令あるいは条文のことです。そのことで社会参加が拒まれたり、資格へのアクセスそのものが拒まれているのです。具体的には、精神障害を理由に公共施設の利用が拒まれていたり、色覚障害で資格が取れなかったりすることです。
 「教育の欠格条項」とはなにか、もちろんこれは学校教育法施行令による学ぶ場の分離をさしています。「学校教育法施行令」では、その第5条で、「心身の故障(=障害)」の程度により就学すべき学校を分け、第22条の3で盲、ろう養護学校へ行くべき「心身の故障」の程度を規定しています。2002年に改訂されたこの「施行令」は、例外的に「認定就学者」など新たな制度は作ったものの、原則としては分離教育を貫き通しています。

障害者基本法

 いまDPIなどの障害者団体が、国連で決議された「障害者差別禁止法」制定へ向けて働きかけを強めていますが、国レベルでは、前国会でいったんは廃案になった「障害者基本法」改定案が再度上程されます。自民党案は、すでに障害者団体などのヒヤリングも終わり、民主党も対案を用意していますが、さほど議論されることなく会期末いっきに可決成立することが予想されます。
 「基本法」自民党案の(教育)第15条は、次のようになっています。

第15条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査及び研究ならびに学校施設の整備を促進しなければならない。

3 国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流教育等を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない。
(下線引用者)

 2001年の「学校教育法施行令」の改定問題では、「11.14ぼくら違法人?埼玉県民永田町行動」をはじめ、全国で署名活動が展開され、「施行令」の問題点が指摘されたにもかかわらず、統合=ともに育ちともに学ぶこととはほど遠い「交流教育」が障害者基本法のなかに位置づけられてしまうのです。

横断的な運動

 埼玉では、「みんな一緒に普通学級へ埼玉連絡会」や「どの子も地域の公立高校へ埼玉連絡会」などの教育運動のグループと地域生活や自立生活運動をしているグループが「埼玉障害者市民ネットワーク」として共同の活動をしています。その中で、はっきりと見えてきたことは、ともにくらす社会はともに育つ経験無しに成り立ち得ないと言うことです。
 2003年4月から始まっている「彩の国障害者プラン21」においては、ノーマライゼーションを「誰もが分け隔てられることなく」と位置づけ、サブタイトルとして「ともに学びともに暮らす社会をめざして」と言う文言が入っています。「埼玉県障害者施策推進協議会」において埼玉障害者自立生活協会の働きかけを通じて、「手をつなぐ育成会」や「埼玉県障害者協議会」が、ともに学ぶことなくしてともに暮らす社会はない、今までの施設づくり、養護学校づくりの運動は間違っていたかもしれないと気づきはじめ、共同歩調を取ったことが大きいといえます。そのことが、前知事の「全ての障害児に普通学級籍を!」という発言につながったと言っても過言ではありません。

教育の欠格条項を考える会(準備会)

 冒頭にも記しましたが、当日は政策研究全国集会に集まった、DPI、全障連、共同連、全国連絡会などの諸団体をはじめ、埼玉からも参加し、部屋に入りきれないほどでした。
 はじめに埼玉から、「『施行令』を何故教育の欠格条項として考えるか、共育を運動のベースとして考えて欲しいこと。国レベルの『基本法』改訂の動きにどうコンタクトするか」など、この会についての基調が報告されました。その後、大阪、名古屋など各地からの参加者から、各地区での運動や自らに生き様をベースにしての共育に向けた熱い思いの発言が相次ぎました。
 そのなかで、養護学校がいいか悪いかと言うことではなく、障害の種別、程度に応じて国が就学先を振り分けるということの問題点がはっきり見えてきたといえます。そして「原則統合」を目指すということは確認できたのではないでしょうか。しかしながら、「欠格条項」という表現はどうか、運動をどう進めるか、事務局などどうするか、具体的な所では時間切れもあって意見の一致を見ることはできませんでした。
 一昨年の施行令改訂問題における署名活動の高まりに見られるとおり、ともに学ぶことへの関心は高い、と言うことは明らかなことですが、各団体ともそれを前面に押し出せていないことも確かです。自民党の「基本法」改訂案についても、障害者団体との意見調整を行ったということですが、結果は「交流教育」止まりになっているのは前記したとおりです。
 だからこそ「障害者基本法」が改訂される前に、各障害者団体を網羅した横断的な運動を構築し、この部分を変えない限り、前回の「施行令改訂」よりもさらに後退するおそれもあります。今一度、全ての問題の元は教育にあること、「原則統合」、ともに育つことなくして共に生きる社会はあり得ないこと、障害によって分けることは差別であるということを確認する必要があります。そして、この会が「学校教育法施行令」改訂、「障害者基本法」に原則統合を盛り込む運動のきっかけになればと考えています。